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私達を目撃してからきっとずっとモヤモヤとしてたんだろう。

おっかない顔したゆきちゃんは、私に言ってスッキリしたのか、すぐにいつもの顔に戻って。

じゃあ今日は帰る、ご馳走様。先輩に連絡しておく。

と一方的に言い放ってから帰って行った。


まだ会うとは言っていないのに、どうしても先輩とやらに会わせたいらしい。

会わせたいというよりは、私の気持ちをきっと忠義くんから引き離したいんだろう。

会ったところで自分の気持ちが変わるとは思えない。

例えば、別れたまま忠義くんに2度と会うこともなかったら、もしかしたら少しくらいは違ったのかもしれないけど。

もちろん忘れるつもりはなかった。

でも、いつきさんを思い出に出来たように、忠義くんじゃない誰かとの未来を想像する日が来たかもしれない。


だけど忠義くんはやって来た。

そしてあの夜、久しぶりに感じる忠義くんに、重ねた唇に。

真っ直ぐな言葉に。

頑なだった心は完全に溶かされてしまった。

うっかりでもなく、決して流されたわけでもなく、私もこの人と一緒に年を取っていきたいと願ってしまった。

だから他に目を向けるなんて、もう絶対に出来るはずがなかった。



それでもゆきちゃんの言葉が何度も頭を過ぎる。

──次は何処に逃げる?

考えてみれば、確かに私はあの時、結局忠義くんから逃げ出したんだ。

自分は傷付かないように色んな言い訳を並べて、そのくせに誰よりも忠義くんを傷付けた。


じゃあ次は?次になんかあったら…今度は逃げ出さない覚悟があるんだろうか。

全てを捨てて、どんなに傷付いても辛くても、側にいるという覚悟。

好きという気持ちだけじゃ同じ事の繰り返しになってしまう。

もっと強くならなきゃ、忠義くんの所に帰れない。

私に必要なものは、きっと覚悟だ。



だけど私の悩みなんてちっぽけで、まるで無駄だと嘲笑うように、現実は案外優しくない。


忠義くんのツアーも終盤。

終わったら会いに来てくれるって言ったのに。

気持ちを聞かせて欲しいって言った癖に。




関ジャニ∞大倉忠義、女優の山本みさきと深夜の密会──。



音を立てたスマホに手を伸ばすと、定期的に知らせるネットニュースで。

踊るその見出しに、目を開いた。

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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

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