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177.(side T.O) ページ30

友達と飲んでた言うから彼女も少し酔うてるんやろ。赤く染まる頬に潤んだ瞳が色っぽくて。

思わず目を逸らした。



「…別に聞きたいわけちゃうけど、気になるやん」

「内緒です」

「ケチやなぁ」

「視聴者が減っちゃうと困りますので」

「1人くらいなんともないやろ。それに聞いたからって見なくなるわけちゃうで?」

「でも言いません」



やっぱり彼女は笑ったまま、綺麗な指先でグラスを手にして、ゆっくりと口に運ぶ。

その仕草すらも色っぽく見えてもうて。

きっとヤスと散々飲んで、思いの外酔うてもうたんやと思う。

なんとなくこのまま飲むのはアカン気がしてきたけど、誘った手前さっさと帰るのも気が引ける。

せめてこれ以上酔わんようにと飲むペースを落としながら。



「俺はなぁ、あの弟が怪しいと思ってるんやけど、どう?」

「だから言いませんて」



ドラマの話で会話が弾む。

そのうちに話題はあっちこっちに飛んで、つい盛り上がってもうて。

それに合わせるように、彼女のお酒もかなり進んでいた。



「…そういえばぁ、大倉さんてツアー中でしたよねぇ?」



気付けば彼女の口調が随分と緩くなってきた。

酔うてるせいか、さっきよりも距離が随分と近い。

薄暗いカウンター、近付いた距離のせいでふいに触れる彼女の腕。

緩む胸元。甘い香りが鼻を掠める。

色気を放つその姿が、禁欲生活の長い俺の中の男を容赦なく刺激する。


……あかんあかんあかん。

何を反応しとんねん、俺。

小さく頭を振って、煩悩を振り払って。

もうええ大人やぞ。負けたらアカン。



「そうやねん。あと2か所で終わってまうわ」

「行きたかったなぁ…」

「……ん?」



そんな気持ちを見透かされるわけにはいかんから、何食わぬ顔して会話を続けると、彼女が予想外の事を口にした。



「実は…、友達とよく行くんです」

「え?プライベートで来てくれてんの?」



小さく頷いた彼女が、だから今ちょっと浮かれてます、ととびっきりの笑顔を向けてくる。

……アカン。普通に可愛い。


慌てて目を逸らして、なんとも思ってませんよって顔でニコッとアイドルスマイル。



「…ありがとう。でも共演してる時そんな事言うてくれへんかったやん」

「…内緒でドキドキしてました」

「…そうやったんや」



恥ずかしそうに秘密を打ち明ける彼女もまた可愛くて。

多分これ、ほんまにアカンやつや。

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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

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