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「ドアになんかぶつかった」

「は?こわいこわい。何?何がぶつかったん?人?動物?」

「さすがに動物ではないと思うけど、ちょっと見てくる」

「アカンて!変なヤツかもしらんやん!」

「大丈夫だってば」

「危ないから止めとけって!」



止める声は無視して、ゆっくりとドアを開く。

さすがにちょっと怖くて、うっすら開けた隙間からキョロキョロと辺りを確認する。

とりあえず、何もいなさそうだけど。

最後に視線を下げると、ようやく犯人を見つけた。

目の前にはしゃがみ込んだ──。



「──ゆきちゃん!」

「痛っ!」



驚いてそのまま勢いよくドアを開けてしまって、ゆきちゃんの体に直撃した。



「わ!ごめん!大丈夫?」

「…大丈夫じゃねぇよ」

「ほんとごめん!その前の大きな音もゆきちゃん?」

「そう。そこに、躓いて…」



私がぶつけてしまった所を押さえながら、ドアの前の段差を恨めしそうに見るゆきちゃん。



「ドアにぶつかった」

「2回目?」

「2回目」

「…ほんと、ごめん」



大丈夫、と呟いて小さく笑いながら、ゆきちゃんが立ち上がった。

突然の事に驚いて、いつの間にか握り締めていたスマホから微かに声が漏れてくる。

…忘れてた。

慌てて受話器を耳に押し当てる。



「ごめん。ゆきちゃんだった」

「…聞こえてたけど!ほったらかしか!」

「ごめんね。とりあえずいったん切るよ?明日から頑張ってね」

「ちょお、待っ──」



一方的に通話を切ったせいで、引き留める声は途切れた。

後で小言の連絡がある気がしてならないけど、とりあえず目の前のゆきちゃんだ。



「…どうしたの?」



さすがに閉店時間は知ってるし、看板だってかかってるし。

何より、こんな時間にゆきちゃんが1人、店に来るなんて初めてだ。



「寄ってもいいか連絡したんだけど、話し中だったから」

「あ、うそ?ごめんごめん。珍しいね。飲んでたの?はなちゃん、心配してない?」

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作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時

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