172. ページ24
「ドアになんかぶつかった」
「は?こわいこわい。何?何がぶつかったん?人?動物?」
「さすがに動物ではないと思うけど、ちょっと見てくる」
「アカンて!変なヤツかもしらんやん!」
「大丈夫だってば」
「危ないから止めとけって!」
止める声は無視して、ゆっくりとドアを開く。
さすがにちょっと怖くて、うっすら開けた隙間からキョロキョロと辺りを確認する。
とりあえず、何もいなさそうだけど。
最後に視線を下げると、ようやく犯人を見つけた。
目の前にはしゃがみ込んだ──。
「──ゆきちゃん!」
「痛っ!」
驚いてそのまま勢いよくドアを開けてしまって、ゆきちゃんの体に直撃した。
「わ!ごめん!大丈夫?」
「…大丈夫じゃねぇよ」
「ほんとごめん!その前の大きな音もゆきちゃん?」
「そう。そこに、躓いて…」
私がぶつけてしまった所を押さえながら、ドアの前の段差を恨めしそうに見るゆきちゃん。
「ドアにぶつかった」
「2回目?」
「2回目」
「…ほんと、ごめん」
大丈夫、と呟いて小さく笑いながら、ゆきちゃんが立ち上がった。
突然の事に驚いて、いつの間にか握り締めていたスマホから微かに声が漏れてくる。
…忘れてた。
慌てて受話器を耳に押し当てる。
「ごめん。ゆきちゃんだった」
「…聞こえてたけど!ほったらかしか!」
「ごめんね。とりあえずいったん切るよ?明日から頑張ってね」
「ちょお、待っ──」
一方的に通話を切ったせいで、引き留める声は途切れた。
後で小言の連絡がある気がしてならないけど、とりあえず目の前のゆきちゃんだ。
「…どうしたの?」
さすがに閉店時間は知ってるし、看板だってかかってるし。
何より、こんな時間にゆきちゃんが1人、店に来るなんて初めてだ。
「寄ってもいいか連絡したんだけど、話し中だったから」
「あ、うそ?ごめんごめん。珍しいね。飲んでたの?はなちゃん、心配してない?」
332人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:咲菜 | 作成日時:2022年8月16日 20時