問題児2人と保護者1人。ただし最強。

弐拾参話 ページ30

『そ、それしか写真なくて、ハハ』

「そっか。はい見てみ」


硝子に手渡された鏡を覗き込んで目を見開いた


…なんか自分の顔はっきり見たの久しぶりかも


「私五条達探してくるわ。気済んだら来な」

『うん……ありがとう、硝子』

「！………どういたしまして」


静かに閉じられたドア


少しして静かな部屋にゴトッと大きな音が響く


鏡を、落とした


『拾わな、いと…ｶﾊｯ』


息が、できなっ


『ﾊｧｯ、ﾊｯ、ﾋｭｯ』

［坊。落ち着け。大丈夫だ］

『ふっ、うっ、』

［そうだ……ゆっくり呼吸しろ］

『ﾊｰｯﾊｰｯ………ありが、と、う』

［お安い御用さ］


…弟がいることを、知られたくないわけじゃない


ただ、あの写真を見られたことが気がかりだった


2歳くらいの弟の写真


それしか写真がない、という言葉だけで現在の弟の姿ではないとわかるだろう


僕のせいで生き別れになった弟


明るくて活発で優しい子だった


…僕はあまり会ったことがないけど


会えるのは年に一度だけ、だったし


今ごろ、どこで何を……(ﾄﾞﾝﾄﾞﾝｯ


『⁉』

「おいA！！早く出てこいってぇの！」

「ごめんね。待ってようって言ったんだけど」


ドアの向こうから聞こえてくる友人の声で一気に現実に引き戻される


それと同時に胸が温かいものでいっぱいになるような感覚を覚えた


こんなにも人の声に安心したのはいつぶりだろう


「…返事がないね。もしかしたら寝てしまったのかもしれないよ」

「はぁ？マジかよ…」

ｶﾞﾁｬｯ)

『起きてるよ』


…え、何その顔


ポカンとした表情の2人を僕は見つめ返した


すると、五条くんが急に


「ん゛んっ」


と声を上げてうずくまった


『だ、大丈夫？』

「…………………………おう」

「さすがだね、硝子」

「マジで天才かよ。負けたわ」

「やりぃ」


…え、今お金渡した？


福沢諭吉が2枚くらい見えたけど…


「あぁ、Aは気にしなくていいからね」

『傑くんが言うなら……ていうか、硝子も居たんだね』

「ん〜？いたよ。クズ共の見張り」

「おい待て今なんつった？は？呼び捨て？」

「聞いてないな」

『ふ、2人はくん付けで許してくれたでしょ』

「お前らのは願望の押しつけ。私のは髪を切る交換条件。な」

『うん』

「クッソ」

「先を越された……」


今まで人を名前で呼ぶなんてことがまず考えられなかっ……


マズい


名前で思い出したけど


万里さんになんて説明しよう……

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