問題児2人と保護者1人。ただし最強。

弐拾弐拾 ページ29

高専に帰ってきて、僕は一人で廊下を歩いていた


理由は単純


五条くん達が先に帰っていろと言ってきたからだ


…いや、脅してきたと言ったほうが正しいか

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「先に硝子んトコ帰ってろ」

「疲れているだろう？報告は私たちがしておくよ」

『疲れてるのは2人も同じ……』

「ん？よく聞こえなかったな。もう一度言ってくれる？」

『…ありがとう、よろしくね』
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…あれは脅しだよね


言うこと聞かなかったら……わかるよね？みたいな空気満載だったもん


ていうか五条くん家入さんのところ行けって言ってたけど…


普通に部屋にいるんじゃないの？


だって今日は午前だけ授業の予定だったし……あ


『家入さん。ただい、ま』


共有スペースで雑誌を読んでいた家入さんに声をかけた


振り返った彼女の「おかえり」という言葉は途中で途切れた


「……おい。どうしたんだ？その髪」


やっぱり聞くよね


矢継ぎ早な質問に詰まりながらも答えていく


「怪我は？怪我じゃなくてもいい。体に不調は？」


怪我もない、不調もない


でも、一つだけお願いを聞いてほしい


『髪、さ。切ってくれないかな』


五条くんより安全な気がする


「切ってあげる。そのかわり」

『？』

「硝子」

『へ？』

「硝子って呼んで」


その言葉にギョッとする


五条くん達もやっと名前にくん付けになったとこなのに⁉


女の子を呼び捨てなんて……ハードル高すぎだよ


でも交換条件ってことなんだよね


皆いい性格してるよ、ホント


『お願いします……し、硝子』

「オッケー。任せときな。クズ共が帰ってくる前に完璧にしてあげる。国重の部屋行っていい？」

『いえ…し、硝子、がいいなら』

「ふっ、ありがと」


僕の部屋、ベッドに座って目を閉じる


「……国重、綺麗な顔してんじゃん」

『え、』

「あぁこら、動くなっての。五条より綺麗だよ。私的には」

『あ、ありがと…』

「ん。あとはちょっとじっとしてて」


静かな部屋にショキショキとハサミを進める音だけが響く


…何分そうしていただろうか


「ん〜……こんなもんかな。鏡ある？」

『そこの抽斗の二段目に』


そう教えてから、あることに気づいてハッと息を呑む


「ん？この写真は？」

『あ、っと、それは、ぼ、僕の弟、』

「…ふうん。小さいね」


本当は、僕の弟はもっと大きい


僕の2つ下だから


もう、会うことのない、唯一の家族

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