問題児2人と保護者1人。ただし最強。

拾参話 ページ19

　
　
　
〔家入さん写真ありがとう。楽しそうだね。僕の呼び出しはただの子守だったよ。これ五条くん達には内緒ね。3日間女の子のお世話して帰ります。夏油くんに負けないでって伝えといて。

写真を添付〕


『ふふ』

「おにいちゃん、どうしてわらってるの？」

『ん？お友だちとお話できて嬉しいからだよ。みおちゃんもお友だちといると楽しいでしょ？』

「うん！あのね、みおのおともだちはね、」


楽しそうに笑いながら自分の友達のことを話すみおちゃんを見ていて、羨ましいと思った


こんな小さいうちから自分と対等な立場に人がいることが、僕には考えられなかった


親という逆らえないヒトの下、万里さんという勝てない人の下


僕はいつも誰かの下にいた


今だって五条くんと夏油くんが上にいる


あの二人には絶対に手が届かないってわかっている


それでも何故だか、あの二人の隣に立てている気分になってしまっているな


……あの二人は僕を認めてくれているから


「みおは、おともだちだいすき！おにいちゃんは？」

『！……僕も友達が大好きだよ』

「そっかぁ」


純粋で、穢れを知らない瞳


この子も大きくなったら、こんな世の中を嘆くのだろうか


毎日その目に呪霊を映すようになるのだろうか


…残酷だな


「A、澪(みお)ちゃんはどんな様子だ？」

『多分懐いてくれた、と思います』

「そうか。澪ちゃん、私と散歩に行こう」

「おにいちゃんは？」

「Aにはお仕事があるんだよ」

『！ごめんね。明日は一緒に行こうか』

「うん！やくそく！」


ゆびきり！と小指を差し出したみおちゃんに、僕もゆっくりと指を伸ばした


万里さんとみおちゃんが出ていくと、辺りは静寂に包まれた


…万里さんは本当に気が利くな


目を閉じて鼻から大きく息を吸う


畳から香るイグサの匂い


昨日降った雨が染み込んだ土の匂い


何もかもが懐かしい


たった半年ちょっと居なかっただけなのに、人間ってすぐ忘れるんだな

　
　
　
　
　


“おにちゃ、ゆいきり、しよ！”
　
　
　


…あの記憶さえも、消し去りたいと思う僕は、


人間ですらないのかもしれない
　
　

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