雄英脱出【死柄木弔】 (ページ49)

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英雄ページ49

あれから、俺と爆豪は警察に保護された。さっき切島の携帯の番号を教えてもらったんだ。今更だけどね。連絡先が二つに増えて、普通の高校生になれた気がした。だからか、気持ちが弾んでいて警察のお世話なんて取っ払いたくなっていた。

　「俺は気絶してたから何も覚えてない。事情聴取はコイツに全部やってくれよ。」

「！！てめぇふざけんな！！！」

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で、適当な理由をつけて強引に帰ってきたってワケ。今はもう真夜中。お母さんは帰ってきているだろう。色んなことがあって忘れてたけど帰ったら殴られるかもしれない危険がある。

静かに鍵を開けて、ゆっくりと扉を引いた。何の声もしない。ひとまず安心して、靴を脱ぐ。部屋の中は電気が一つもついていない。恐らく母が居るはずのリビングを覗き込む。

　「ただい…………ま、、」

「おかえり。アヤトくん。」

灰色の髪に汚れた黒い服。俺を貫く赤の瞳。見慣れたリビングに似つかない、イレギュラーがそこにあった。思わぬ事態に体が硬直する。呼吸がどんどんズレていく。

　「し、しがらき、さん…？なんで、」

「さっきはごめん。爆豪くんにばっか喋って、アヤトくんを蔑ろにしてた。本当はアヤトくんを怒らせたかっただけなんだ。」

死柄木さんは弱っているように見えた。しかしその目からは溢れんばかりの憎悪が渦巻いていた。俺が好きな死柄木さんだ。緊張と興奮が膝に集中したため、俺はへたり込んだ。

床がべったりしている。掌を見ると赤い何かがついている。
…血？その血痕を辿っていくと母がいた。顔と肩のあたりが軽く崩れているだけで綺麗なままだった。まるで、まだ生きているようだ。

「アヤトくんが必要なんだ。俺、もうアヤトくんがいないと、ダメなんだ。君の家族は母親だけなんだろ？だから、ほら。この通り。これで一緒に来てくれるよな？」

これが敵なのか。と俺はいつになく客観的だった。血のつながった人間が死んでいるのに、むしろ開放感さえ感じた。アイツの言ってた「ヒーローになれ」なんて呪いはもう無いんだ。

窓から風が吹き込んで死柄木さんの髪が靡く。彼の目がはっきりと見える。懇願の声には合わない、気持ちいいくらいの悪役の笑顔が俺に向けられた。

お母さんがいなくなった。俺は自由なんだ。あの苦しみはもう続かないんだ。ヒーローが嫌いでも良いんだ！！幼い頃の素直さを取り戻せた。

　「死柄木さん！ありがとう！！」

今日が今まで生きてきた中で、最高の日となったんだ。