雄英脱出【死柄木弔】 (ページ47)

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もう！！！ページ47

慣れ親しんだ、心地よい空気と香り。
あれ、何で俺…。だんだんと体が目を覚まし、自分が置かれた状況を理解できるようになる。そうだ。俺攫われたんだ。

　「！！」

勢いよく顔を上げた。目はバッチリ冴えている。見渡すと、バーだった。先程香った心地良さはここの匂いだったのか。

「あ！！」

背後から大きな声に体がびくりとなった。後ろを見ようとするが動かせない。椅子に拘束されていることに気づいた。

「アヤトくん！起きたんですね！！」
「動かねえから殺しちまったかと思ったぜ。」

横から覗き込むようにして、俺の視界に入ってきたのはヒミちゃんとダビさん。知っている顔が２つもあり、不安が和らぐ。それと同時に敵である2人との対峙に緊張した。

「バクゴーくんもアヤトくんの後ろにいるんですよ。アヤトくん、カアイイねえ」

たしかに後ろから寝息が聞こえている。爆豪も攫われたんだろうか。なんかテレパスでそんなこと言ってたかも。
そんで背中合わせに座ってるのか。首がチクチクしてたのは爆豪の屈強な髪が刺さってたからか。

　「…何が目的な」

「あ！弔くん！！」

言葉を遮ったのはヒミちゃんの「とむらくん」。

え？と、とむら…死柄木さん！？首が動かせないから分からない。どうしようこんな醜態を見せたくない。ガチャガチャしてみるも取れる気配は一向に無い。

「ん…あ゛？」

振動が伝わったのか、爆豪が起きてしまった。うるさくなりそうな予感。というか早く取らないと…。

　

「おはよう。」

後ろから死柄木さんの声がする。冷たくて悍ましい声だ。俺が大切にするはずの声。でもそれは俺に向けられたものじゃなかった。

「早速だがヒーロー志望の爆豪勝己君。

　俺の仲間にならないか？」

　「っ！！」

心が千切れそうだ。張り裂けそうだ。今まで薄らいでいた独占欲がここで込み上げてきた。爆豪に当てられた言葉。それが許せない。なんでだよ。なんで。俺を見て欲しい。それだけなのに。

嫉妬で歪んだ顔を隠すように下を向く。悔しい。殺してやりたい。爆豪を？違う、誰だ。どうすれば、誰を無くせば俺は幸せになれる。ああ、もう！！！

ぐるぐる回る思考を放棄した。
「おい！…色取！！」

　「え」

見上げると、拘束を外された爆豪が立っていた。

「色取ィ！！何回呼んだと思ってんだよ！！」

　「ご、ごめん」

「謝ってんじゃねえ、こっから出るぞ！！」

爆豪は俺の拘束を爆破した。その音が妙に気持ちが良かったのを覚えている。