雄英脱出【死柄木弔】 (ページ1)

今日:37 hit、昨日:51 hit、合計:103,625 hit

投獄ページ1

「いってらっしゃい」

母親はニコニコしながら言った。まるで普通の“おかあさん”のように。「受かった」この言葉を聞いた途端こうなったんだ。

新品のローファーをコツコツ鳴らし、黙って扉を閉めた。母親の笑顔は消えていた。

小さい頃から「ヒーローになれ」「ヒーローであれ」そう言われてきた。実際問題、やりたいことなんて無かったし全部言われるがままにしてきた。俺にはそれしかできなかったから。

ただ、俺をヒーローに仕立てあげようとする母親が嫌いだった。なんだか自分を塗り潰されるようでヒーローも次第に嫌になった。

「ヒーローはそんなこと言わない。」「ヒーローならもっと優しい。」「もっと聞き分けがいい。」
「もっと賢い。」「もっと」「もっと」「もっと」

口を開けばヒーローヒーロー。心を押し殺されて作られたのが俺という名の偽善で…、母親の操り人形だったんだ。

それに気づいたのが受験が終わった日。俺はなんてバカだったんだろう。嫌いなモノになるために嫌いなモノの言う事を聞くなんて。

駅から徒歩で20分。倍率は300、偏差値79。今日から高校生活がここで始まる。

ヒーローの資格も、認められることも、友達もいらない。ヒーローなんかに染まらない。俺は俺を守る。

密かな抵抗。小さな憎悪。

アホ程デカい門を潜ったんだ。