うちの暴君は『嫉妬深い』だけ【石田三成】

漢たちの仁義 ページ36

乙女たちが恋バナに花を咲かせていた頃と同時刻、グラウンドではBASARA学園恒例行事が密かに行われていた。


「今日のグラウンド所有権は俺ら野球部だろうが！」


右目に眼帯を付けた男子生徒が隻眼を吊り上げる。
野球部主将、二年の伊達政宗。


「否！近々試合を控えているゆえ、グラウンド所有権をしばらく譲って欲しいと昨日申したではござらぬか！」


額に赤い鉢巻をして、政宗に対抗する男子生徒。
サッカー部主将、同じく二年の真田幸村。

彼らのグラウンド争奪戦は織田信長前理事長の時からこの学園の名物となっていた。


「このまま言い争っていても埒が明かねぇ。ならやるべき事は一つ。勝負だ真田幸村ァァ！今日こそ決着をつけてやるぜ！」

「望むところでござる伊達政宗ぇぇえ！」


政宗は両手に合計六本のバットを持ち、幸村はどこからともなく現れたサッカーボールに片足を乗せて睨み合う。
そんな二人を見ながら他の部員たちは互いの主将を応援していた。


「……ちょっと右目の旦那、昨日もこうなって結局うちが勝ったよね？なんでさらっと無かったことになってんの？」


外野の熱気が高まる中、バンダナで髪を上げたサッカー部副将、三年の猿飛佐助が政宗の傍に控えていた男に尋ねる。

佐助が声をかけたのは政宗のお守り役で野球部副将、同じく三年の片倉小十郎。
一見教師と見間違うほど落ち着きのある生徒だが、佐助の言葉に溜息を吐いて反論した。


「野球部(うち)も来週他校との試合が決まったんだ。決めておいてなんだが、流石にこうなれば話は別だろう」

「だったらもう交互に使おう。うん。それがいい」

「政宗様が快く承諾すると思うか？それにテメェのところの暑苦しい主将も承諾するとは思えねぇな」

「否定出来ないけど俺様たち前理事長の時に軽く校舎破壊した前科があるせいで特に生徒会には目をつけられ＿＿」


そう呟いていた佐助の予感は不運にも的中してしまう。
双方が盛り上がる中、その戦いに水を差すような足音が迫っていた。


「野球部！サッカー部！貴様らに苦情が来ている！即刻グラウンドを明け渡すか生徒会に降伏しろ！」


グラウンドに響く三成の声。
部員たちの視線は一気に生徒会の人間の方を向いた。

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