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「…わかったよ、もう。乗る！タクシー乗るから！」
私の言葉にやっと向井の顔は少しだけ緩む。
「これ使えや」
そう言って握らされた諭吉さん。
いや、向井さん、ワンメーターの距離に諭吉さんいらんのよ。
向井ってたまによくわかんない金銭感覚してるとこあるんだよな。なんなの、実はお坊ちゃんなの？
「向井心配しすぎだよ」
それに私も向井と比べたら全然だけど、社会人だしそれなりにお金はあるから、タクシー代くらい自分で出せる。
突き返そうとしたけど、それは見事に避けられた。
「心配して悪いか？やって、」
「だって？」
「いや別になんもない」
「え、なに、気持ち悪い」
「うっさいわ」
とにかく真っ直ぐタクシーに乗って帰れ、家に着いたら連絡しろ、って向井は口早に言う。
「わかった、わかった」
「適当に流すなや」
やからお前は、ってまた始まりそうな雰囲気を察して、向井の背中を押して改札に押し込む。
無理矢理私の手によって改札をくぐってしまった向井は、こちらを振り返る。
「ちゃんと真っ直ぐ帰れや！ほいほいついてったらあかんで！」
ある程度、人がいるのにびっくりするぐらいよく聞こえるその言葉に思わず苦笑いが溢れる。
ほんと恥ずかしいからやめて欲しい。
穴があったら入りたいくらい。
早く行け、ってシッシと手を振ると向井は名残惜しそうにこちらを何度も振り向きながら階段を登っていく。
あー、やっと解放された。
向井があのモードになると厄介なんだよなぁ、、、
なんだかどっと疲れが肩にのしかかる。
…帰ろ。
無理矢理向井に握らされた諭吉さんを手帳に挟むと、小さく息を吐いた。
駅を出て、目の前にあるコンビニにふと視線を向ける。
コンビニの前。
喫煙所の隣に設置されたゴミ箱。
その横にある車道と歩道を分ける手すり。
そこに腰掛ける何人かの人。
その中に見覚えのある人物の姿がひとつ。
「また会いましたね」
深澤さんはそう言うと、優しく笑った。
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さーや(プロフ) - 優希さん» すみません💦教えていただきありがとうございます。修正しました。 (2021年10月30日 4時) (
レス) id: 4b2ff4c864 (このIDを非表示/違反報告)
優希(プロフ) - 28ページが原石のときのまま森本くんの名前が出てしまってます💦 (2021年10月29日 21時) (レス) @page28 id: 4434fac4a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さーや
| 作成日時：2021年10月26日 21時
