306・ ページ6
ーAsideー
「はぁっ……強くなったな」
珍しく息を切らす四方さん。そうさせたのは私だと思うと背中がぞくっとした。
『そりゃどうも』
「俺はお前を娘のように育ててきたつもりだった。実際のところ嫁もいなければ子もいないんだが」
『あれから親が欲しいと思ったことなんて一度たりともありません。四方さんが半端に親面する
のも死ぬほど嫌でした』
「…悪い」
『でも、親という存在に裏切られ、自分の手で抹消した後少し後悔したんです。
まだ無知だったあの頃に戻れたらどれだけ幸せだろうって。そんな時に四方さんが親代わりに
なってくれて心の穴が少し埋まった気がしたんです。だから…ありがとうございました』
四方さんは申し訳なさそうに微笑む。今日は四方さんが二回も微笑んだ。
きっと明日の天気は雪のち槍だ。
「俺は下に戻る」
『私はもう少しここにいます』
私は1人夜景を眺めた。四方さんはこの夜景を見て何を思ったんだろう。
『孤独って感じ…！わはっw』
寝そべって夜空を見上げる。キラキラ煌めく満天の星。
夜空を指差し星と星を繋ぐ。白鳥座、鷲座、琴座。
『三角関係』
「星座見てるの？」
『うわっ！？』
急に飛び出してきた顔に飛び起きる。
「そんなにびっくりしなくても…」
『ご、ごめん』
ウタさんは少し星を見てからフェンスに寄りかかる。
ポケットからタバコを出すとライターで火をつけた。
「…おいで」
誘われるままウタさんの元へ。
「Aちゃんも吸う？」
『吸ってみたい！！』
「いいよ」
一度しまったタバコをもう一度ポケットから取り出すウタさん。
タバコを一本渡され、それを口に咥えた。
『ライター貸して』
黙っているウタさんにクエスチョンマークをプレゼントする。
「そのままタバコ咥えてて」
『？？？』
ウタさんは私の後頭部を掴むと顔を近づけてきた。
『ちょ、ウタさん！？』
「じっとして。火傷しちゃうよ」
ばくばくと波打つ心臓が___。火はゆっくりとつき、それからすぐに煙が上がってきた。
「ん、ついた」
『…もう！！普通にライター貸してよ！！』
「はは、ごめん。一回やってみたかったんだ。シガーキス」
『シガーキス？』
「そう。タバコからタバコに火をつけるのをシガーキスって言うんだって」
『へー。…タバコって不味いね』
「そうだねぇ」
人間はこんなのも美味しいって感じるのかなぁ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 154人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「東京喰種」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
eye(プロフ) - 名倉さん» ありがとうございます！夢主ちゃんの複雑な感情が伝わってよかったです。更新頑張ります！ (2019年5月25日 0時) (
レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
名倉 - part7おめでたうです！ 真相が明らかになっていく...！ 夢主ちゃんの感情がひしひしと...こう、ひしひしと伝わってきて、すごいなぁと思います。eyeさんのペースで更新頑張ってください！ (2019年5月24日 22時) (レス) id: c1e6d1df23 (このIDを非表示/違反報告)
eye(プロフ) - よつぎさん» ありがとうございます！なかなか物語が進まず申し訳ないです…！完結目指して頑張ります！！ (2019年5月20日 1時) (レス) id: 7f970af50c (このIDを非表示/違反報告)
よつぎ(プロフ) - いつも、楽しみに読ませてもらってます！Part7でも、更新頑張って下さい！応援しています！ (2019年5月20日 0時) (レス) id: 1767016ec7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：eye | 作成日時：2019年5月19日 22時
