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「…まぁ、そういうわけで、バンドをやめたい、と思って、る」
優吾くんにバイクで送ってもらって数日後。バンドの練習が終わってから、3人を引き留めて優吾くんに一度話した内容をもっとちゃんと、伝えた。
途中「はぁ！？」と大きな声を出した大我だったけど、一度、「最後まで聞いてほしい」と伝えればその後は静かに話を聞いてくれた。
すべてを話し終え、結論的にどうしたいのか。それを伝えれば、シンと音がするんじゃないかというくらい静かになった。
京「…わかった」
その沈黙を破ったのは大我だった。「わかった」という声に全く温度がなくて、その言葉が私の「やめたい」を認めたものではないとすぐにわかった。
絶対にこの先がある。と、聞くために視線を大我に向ければ、初めて見るくらいに冷めたい目をしていた。
京「最近のことも、どうしたいかもわかった」
京「でも、“わかった。じゃ、違う道で頑張って”みたいなことは言えない」
京「やめる以外に方法はないの？」
あぁ、怒ってる。本当に怒ってる時のやつだ。
直接ガンガンに文句を言ういつものちょっとしたケンカみたいなやつとは違う。詰めてくるような話し方でせめてきて、多分私の返答によっては感情を出してくる。
…目とか声とか。そういうのでわかっちゃうくらい一緒にいたもの。大我だって、私が今、どう思ってるか、わかるはずなのに。
「ないよ。今まで通りにやってれば、いつか歌えなくなるし、いつもの…完全に喉に違和感なく話してる時のあの声は出なくなる。…今みたいな、変な声になっちゃう」
優吾くんに話したあの日、ライブの後でお酒をたくさん飲んで、その後たくさん話して。そんなことをすればかばって使った喉も結局荒れて、練習がある今日もがさついた声に咳が出る。
練習とバイト以外で必要最低限しか喋らない生活をしても治る気配がまだ見えないそれが、私の喉の弱さを表していて、今後、今まで通りに歌ったりできる時間があまりないことを実感させた。
「喉に負担かけないようにして歌えるようにしたって、それは今までとは違う。それで満足かって言われたらそれも違うし。」
「例えば、これから先うまくいってお仕事にできたとしても、いつ終わるかわかんない。そんなの賭けだよ。賭けをして、もうどうしようもないところまで喉おかしくして、お仕事もできなくなって話すとも大変になるくらいなら、今、やめちゃいたい」
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作者名：天羽
| 作成日時：2022年11月30日 3時
