幹部のトリコ【中原中也】 (ページ9)

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８話ページ9

・no-saido

「今のところ、A様のご様子におかしな所はございません。」

ご報告以上です。静かな部屋に響く声の持ち主は中原の部下相塚だった。

相塚の目線の先には渡された資料を見つめる鴎外と、美味しそうにケーキを頬張るエリス嬢がいた。

「そうかい、ご報告ありがとう相塚君。

最近欧州からいい茶葉を取り寄せたのだよ、是非飲んでみたまえ。ひと休憩だ。」

ありがとうございます。そう相塚が頭を下げると奥の部屋から待っていたと言わんばかりに黒服がティーセットを運んできた。

彼は相塚と同期だったが、もうお互い何も感じるものがない顔をしてお互い顔を見ることもなかった。

「とてもいい香りの紅茶ですね、

流石、欧州の茶葉ですね。」

「美味しいのだがそれなりに値が張るからねぇ、また取り寄せれるか今から不安になってくるよ。」

大きくため息をついて苦笑する首領に、やや微笑をこぼした相塚はもう一回紅茶に口を付けた。

休憩と言ったものの、話すことは仕事のことでこれを休憩と言うのだろうかと思うが彼らに休息など本当はないのかもしれない。

「そう言えば、相塚君は結婚しているのかい？

これは、私自身の興味本位できいている事だから無理に言わなくけと構わないのだが…。」

「結婚はしていません、願望も全くありませんので…。

親も昔からいないのでずっと独り身です。」

淡々と話すが相塚の目には情など映っておらず他人事のように話していた。

「生涯もずっと、

＿＿＿＿＿＿独り身ですね。」

その言葉を隠すように紅茶から湯気がたちに当たりはしんみりしていた。

首領をただ何も言わず面白そうに、舐めるような目線で相塚を見ていた。