幹部のトリコ【中原 中也】

２０話 ページ21

・no-saido


「そろそろ式の日取りを決めるのはどうかね、中原君。」



インクの匂いが当たりにほんのり漂う中、鴎外はなんの前触れもなく発言した。


式の日取り、中原とAはまだ籍を入れておらず婚約者で止まっていた。



「お言葉ですが首領、今月中には難しいかと…。」



中原は任務や会議などに追われていて、結婚など私情に手をつける余裕などなかった。

しかし、そのような理由は建前で中原はAと結婚することを躊躇していた。その理由など悟らせないように苦笑した。




そのあとは軽く談笑をし、時間が来たため退出しようと中原が後ろを向いた時だった。


「中原君。」





と呼び止められ中原が振り向くと鴎外はいつもの笑みで口を開いた



「君は相塚君のことをどう思っているのかな？」



微笑を貼り付ける鴎外の奥の思惑は中原にも誰にもわからなかった。



中原は数秒黙り込み、フッと笑みを漏らした








「相塚は優秀な部下だと思っています。」



曇のない目に映っているものは真実なのだろうか。



人は必ず秘密をつくる


嘘と本音が交錯する中で生き残らなければならないのがこの世界の厳しさだ。




鴎外はそれ以上追求することもなく、中原は再びフレンチ・ドアに向った。

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