No.27 ページ27
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あのまま、ごめんの一言すら言うことも出来ず轟くんは学校に来なくなってしまった。
一人の登校、一人の屋上、一人の昼食。どれも慣れていたはずなのに、轟くんと一緒にいたせいで不思議な感覚になる。
『別に寂しくなんてないし。一人でも平気だし』
そう呟きながらも思わず携帯を覗き込んでは、連絡先にない彼の名前に落ち込む。こうなるなら連絡先くらい交換しておけば良かった。
…いや、そもそも喧嘩なんてするんじゃなかった。
止まらない自己嫌悪に、こんなことを考えるなんて何年ぶりだろうと思いながら、前に食べられなかったたまごのサンドイッチを頬張る。
そうして今日も轟くんのいない一日が終わっていくわけだが、まさかあのニュースを見てしまうまで彼がどんな危険に飛び込んでいたのか、知る由もなかったのだ。
それは学校の帰り道にある、ビルに掛けられた大きなテレビ。いつもは見ずに通り過ぎるのだが、その日だけはアナウンサーの声に引き止められた。
「昨夜20時過ぎ、保須市にてヒーロー殺しステインがエンデヴァーによって逮捕されました」
『エンデヴァーって確か、轟くんの…』
顔を上げれば、怖い顔をしたヒーローの写真が映っていて、これが轟くんのお父さんなんだと初めて知った。
しかし良く考えてみれば、エンデヴァーがそこにいたということは轟くんも必然的にそこにいたことになる。
彼の安否が少し気になり、あまり気は進まなかったけれどテレビを見つめて意識を集中させた。
『っ…！なに、今の…』
衝撃の光景が頭に流れ込んできた途端、私は震えそうになる足に鞭打ち、駅へと走って行った。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
