No.22 ページ22
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金髪チャラ男の声により、「何々ー？」「上鳴、どうした？」とA組の人達がぞろぞろと私の方へと集まっていく。
そんな大注目をされることなんて今までなかった……いや、悪い意味ではあるけれど。とにかく、そんな好奇心の目で見られたことはなかった為、頭の中がぐるぐるして気持ち悪い。
「あ、君、この前の！体調は…大丈夫じゃなさそうだね。轟くん呼ぼうか？」
良いのか悪いのか、このタイミングで登場する緑谷。そして彼は大きな声で轟くんの名を呼ぶと、あれ？と気まずそうに首を傾げる。
「感宮、どうしたんだ」
『その…ここではちょっと…』
「…あぁ、そうだな。場所変えよう」
私の気持ちを察してくれた轟くんは、クラスメイトを見向きもせずに歩き始める。
私もその後に続こうとしたけれど、ふと視界に入った人物に目を大きく見開いた。
「感宮？」
『ううん、何でもない』
それは金髪チャラ男もとい上鳴という人でも、緑谷でもない、私の苦手な人物。
その人物もまた、私を見て目を見開いていたけれど、そんな表情は私の記憶からすぐに抹消した。
『轟くんってクラスの人と仲良くないの？緑谷の声も無視してたみたいだけど…』
「別に。ただ、俺には必要ないだけだ」
『ねぇ、それ私の真似？』
「いや、そんなつもりはないが…」
『あっそ、まぁいいけど』
昨日、ほんの少しだけ視えてしまった轟くんの過去。絶望した彼の近くには、恐ろしい顔をした母親らしき人がいた。そしてその人は沸騰するヤカンを持っていて。
きっと彼の顔にある火傷の理由は大方それなのであろう。ならば、私と同じように何かを抱えているのかもしれない。
とは言っても、私には何も出来ない。出来るとしても傷の慰め合いくらいだろうから、私は何も言わずに彼の隣を歩いた。
ごめんね、私は卑怯だから自分のことで精一杯なの。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
