No.16 ページ16
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何故、そんなに私に構うの？
グッと歯を食い縛り、拳を力を込めて作る。私はそんなに弱く見えるのだろうか。一人だって平気なのに。
『もう、お願いだから…私に構わないで。一人にさせてよ…』
こんな時に限って思い出してしまうのは、せっかく出来た友人に裏切られた時のこと。
私がいないところで、気味が悪いなどと悪口を言われ、終いには私の目の前でも乏し、虐めてきた。
きっと、轟くんと仲良くなったって、結局は裏切られるんだ。…私の個性を知ることによって。
「みゃあ…」
『シロ…ごめんね、大丈夫。怖かったね』
足元でシロが心配するように鳴いていた。
大丈夫だよ、と伝えるようにシロを抱き上げればポツリポツリと冷たい雫が私たちの頬をぬらしていく。
『雨…』
「みゃあ！」
『シロ！？』
それに驚いたのか、それとも雨が苦手だからかシロは私の腕から飛び出して、どこかに逃げてしまった。
すると轟くんはジャージの上着を脱いで、私にふわりと掛けてくる。何事かと抵抗しようとすれば、「触れられたくねぇならじっとしてろ」と脅し文句を言ってきた。
「猫は水が苦手だからな。きっとどっかで雨宿りでもしてるんじゃねぇか？」
『あぁ、そうだったね』
「感宮も。風邪引くといけねぇし、これ着とけ」
そう言う轟くんは、タンクトップ一枚。そこから露わになった鍛えられた二の腕の筋肉に、ドキリとしつつ目を逸らす。
『それじゃあ、轟くんが風邪引く』
「俺は別に大丈夫だ」
『そんなわけない……もう、いい。付いてきて、私の家すぐそこだから』
これはさっきのお礼というだけで、深い意味は全くない。今回だけの、特別なんだから。
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作者名：空涼
| 作成日時：2019年5月10日 19時
