#22 ページ22
.
[遡ること3時間前]
.
屁怒絽さんが買い物に出て少しした頃。
僅かに聞こえた足音に気付いて、手に花を持ったまま店の外へ向かった。
「いらっしゃいま___、」
「……よぉ」
お客さんかと笑顔を向けた先にいたのは、最も会いたくない人で。
どくり、と心臓が激しく脈を打った。
「……今日はあの化けもんもいねーみたいだな」
「……、」
「いい加減俺のところに来る気になった?」
「……なりませんよ」
愉快そうに笑っていた顔が、曇る。
「あなたを好きになることなんて、絶対にないです」
ぴく、と眉が動く。
どうやら気に障ったらしい。
怖くない、とは言えない。
今も手は震えているし、汗も滲んできた。
だけど、ちゃんと言わないと伝わらない。
この人も、いつまでも変われない。
「んでだよッ!」
男が蹴った植木鉢が、大きな音を立てて割れる。
花が折れて、くしゃりと踏みつけられた。
______パンッ
ぎゅっと、痛んだ手を握る。
(……人を叩くって、こんなに痛いんだ)
咄嗟に出てしまった平手打ちに、男は驚いたように私を見つめた。
許せなかった。
この人は簡単に命を粗末にする人だ。
屁怒絽さんのように、銀時さんのように、優しい心のない人だ。
「調子に乗んなよ、クソアマっ、!」
「っ、……ぅ、」
急に掴まれた首に、呼吸ができなくなる。
(苦しい、)
じわり、と涙で視界が滲む。
「……、ぃや、!」
だんだん抜けていく力が怖くなって、咄嗟に男の顔を引っ掻いた。
いきなり吸い込んだ酸素にひどく咳き込んだけれど、そんなことも気にせずに走り出す。
雨が降っていることに気が付きもしなかった。
ただ、無我夢中に逃げた。
怖い。助けてほしい。誰か、……誰か。
脳裏で振り返ったのは、
(銀時、さん)
あまりに優しい、彼だった。
.
478人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
日向(プロフ) - 由菜君さん» わああ嬉しいです…!!!キュンキュンして頂けて良かったです!ありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - 381さん» そう言っていただけてとっても嬉しいです!!こちらこそ素敵なコメントありがとうございました…! (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
由菜君 - めちゃくちゃキュンキュンしました、、!すっごく良かったです! (2021年2月9日 21時) (レス) id: dc79ac4bfc (このIDを非表示/違反報告)
381 - 神楽ちゃんがおもしろくて、、、一気に読ませていただきました!とっても素敵な作品をありがとうございますッ! (2021年1月25日 21時) (レス) id: 664ca7d814 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - Kさん» まさにそういったものが描けたらと思って作った作品なので、そう言って頂けて本当に本当に嬉しいです…!ドキドキさせられて良かったです!こちらこそこの作品に出逢って頂いてありがとうございました…! (2021年1月23日 22時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:日向 | 作成日時:2020年11月1日 19時