#11 ページ11
.
「……はぁ、」
Aちゃんがヘドロの森へと吸い込まれていって、数秒。
その背中はもう見えないってのに、何故か動けないでいた。
『その、また一緒にご飯とか…！』
……こっちにまで緊張が移りそうなくらい震えてた声と、微かに染まった頬は、俺の胸を締め付けるには十分すぎた。
＿＿＿いやだから、かわいすぎるだろ。まじで。
夕飯の後、洗い物をしながら言った俺の言葉に、ひどく動揺していた彼女を思い出す。
まさかあんなに顔を赤くして、ウブな反応をするとは思ってなかったから、俺まで動揺した。
常に冷静なイイ男を演じんのも、なかなか大変なこった。
(…それにしても、かわいかったな)
無意識に口角が上がるのを感じて、さっと表情を戻すと、軽い足取りで来た道をひとり歩いた。
.
「帰ったぞー」
「おかえりなさい、銀さん」
「Aとはどうだったアルか？」
「どーもこーもねーよ、別に」
「…つまんないネ」
「送ってくだけだっつったろ。…まーでも、」
また一緒に飯食おうって。
そう伝えると、神楽の目がキラキラ輝いた。
「きゃっほう！脈アリアル！」
「え、そうなんですか？」
「これだから駄眼鏡は駄眼鏡ネ」
「なんでだよ！」
「女はそういうこと本当に好きな男にしか言わないアル！」
「えーそう？やっぱり？銀さんイイ男だからなー」
「……調子乗んなヨ、マダオが」
「今調子乗らせたのお前だろーが！」
「なんでAみたいな優しい子が銀ちゃんみたいなの好きになるアルか…」
遠くを見つめ始めた神楽にげんこつを一発入れる。
痛いと涙目の神楽を見つめながら、Aちゃんは誰にでも優しいからな、なんて柄にもなく物思いに耽った。
勘違いしちゃいけねェ。
勘違いしたまま動けば、「え？そんな気じゃなかったのに…」なんて引かれて終いだ。
そんなこと言われた日にゃ俺は間違いなく凹む。
そして病む。落ちるとこまで落ちる。
大人っつーのは厄介なもんで、若い頃みてーにぱっと次の恋に移れるわけじゃねェ。
勘違いするな、俺。
自分に戒めの意味を込めて頬を叩くと、二人は不思議そうにこちらを見つめていた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 478人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「銀魂」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
日向(プロフ) - 由菜君さん» わああ嬉しいです…！！！キュンキュンして頂けて良かったです！ありがとうございました…！ (2021年2月12日 13時) (
レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - ３８１さん» そう言っていただけてとっても嬉しいです！！こちらこそ素敵なコメントありがとうございました…！ (2021年2月12日 13時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
由菜君 - めちゃくちゃキュンキュンしました、、！すっごく良かったです！ (2021年2月9日 21時) (レス) id: dc79ac4bfc (このIDを非表示/違反報告)
３８１ - 神楽ちゃんがおもしろくて、、、一気に読ませていただきました！とっても素敵な作品をありがとうございますッ！ (2021年1月25日 21時) (レス) id: 664ca7d814 (このIDを非表示/違反報告)
日向(プロフ) - Kさん» まさにそういったものが描けたらと思って作った作品なので、そう言って頂けて本当に本当に嬉しいです…！ドキドキさせられて良かったです！こちらこそこの作品に出逢って頂いてありがとうございました…！ (2021年1月23日 22時) (レス) id: 518bab79dd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：日向 | 作成日時：2020年11月1日 19時
