43 ページ45
教室に鞄を取りに戻ってさっさと帰ろうと、屋上の扉に手を掛けて衝撃の事実に気づいてしまった。何かの間違いかともう一度ドアノブを捻るが押しても引いても扉は開かない。なかなか扉を開けない私を不審に思ってか弔くんがどうしたのかと問いかけた。
「…鍵、閉まってる」
そう事実を告げると弔くんはポカンと口を開いたまま呆然としてしまった。
寝過ごしただけならまだしも屋上に締め出されるなんて思ってみなかった私はその場に蹲って頭をフル回転させる。施錠に来た職員に気付いてもらえなかったのかとも思うが私たちの寝ていた場所は入り口から見て死角だったので見つけられなかったのだろう。すでに日が落ち暗くなり始めた空に焦りを募らせ、どうしたものかと助けを求めるように弔くんを見上げる。
「…扉壊すか」
「駄目だよ！」
たしかに現状は打破できるけど今後のことを考えるとそれは駄目だ。怒られるどころじゃ済まなくなるのは明白。
結局、先生にバレて怒られるのは承知の上で荼毘先輩とトガちゃんに連絡して開けに来てもらうことに…電話口での荼毘先輩のあの爆笑ぶりが恨めしい。
「っくしゅ」
「おい」
助けが来るまで屋上で風に吹かれながら待ち続けているとつい寒気がしてくしゃみが出てしまった。昼間は少し暑いくらいだったけど流石に日が落ちると寒いな。
貯水タンクの壁の影に隠れて少しでも風に当たらないように屈んでいると、不意にふわりと降ってきた黒いパーカーに包まれて思わず彼を見上げた。
「…これしかないけど」
「いいの？弔くん寒くない？」
「うん」
彼がいつも着ている上着を貸してくれたのだと気づいたと同時に、彼の甘い香りに身を包まれていることにキュンとしてしまった。なんだかまるで弔くんに抱きしめられてるみたいで無性に気恥ずかしい。
「…ありがとう」
袖を通してみて気づいた私には少し大きめなサイズのそれに、より一層彼を意識してしまって余った袖で隠すように顔を埋めた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 190人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
結衣(プロフ) - んんん好き！！これを求めてたんだよ私はぁぁぁ！！！ってなりました…。弔くん大好きなのでホントに最高の一言に尽きます……更新頑張ってください！応援してます✨ (3月30日 1時) (
レス) @page30 id: df2d4255b1 (このIDを非表示/違反報告)
さかさま(プロフ) - 引きこもり隊さん» コメントありがとうございます！神様！？恐れ多いです…！ヴィランの学パロ需要が思ったより多くて嬉しいです！これからも更新続けていくのでお付き合いいただけますと幸いです٩( 'ω' )و (2022年10月11日 4時) (レス) id: b42d64db62 (このIDを非表示/違反報告)
引きこもり隊 - この小説最高すぎる！！！！！！！こんなのあったらいいなって思ってたから嬉しすぎいいい！！！！！ありがとう！！！！神様！！！！さかさま！！！！(∩´∀｀)∩ﾜｰｲ (2022年10月9日 21時) (レス) @page37 id: af8345609d (このIDを非表示/違反報告)
夢(プロフ) - さかさまさん» 返信ありがとうございます！！他の作品も書いてらっしゃるんですね！見てみます！いつまでも待ちます！！！無理しない程度に頑張ってください！ (2022年8月25日 8時) (レス) id: 015500b8f9 (このIDを非表示/違反報告)
さかさま(プロフ) - 夢さん» コメントありがとうございます！亀更新でごめんなさい;;同時進行で更新している長編が完結次第、こちらの作品に本腰入れていきたいと思ってますのでもうしばしお待ちいただけると…！しえはちも後々登場予定なので期待に添えられるよう頑張ります！(´∀｀*) (2022年8月23日 20時) (レス) id: b42d64db62 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さかさま | 作成日時：2022年1月22日 1時
