【名探偵コナン】それ、疲れません？【降谷零】

Case47 ページ49

『いや、ホントに、汗臭いからダメです』

「僕は気にしないんですけどね…」

『年頃の女の子は気にするんです』


結局、コナンくんに横目で心配されながらも、

私だけ安室さんの車に乗せてもらうことになり、

車の中で気がついた。



めちゃめちゃ自分、汗臭いと。



いや、

どれだけ相手が悪い人であろうとも、

汗臭いのは気にする。

あれ、私だけかな。



『ご飯は、また、今度、絶対』

「そんな顔に皺寄せないでくださいよ。
せっかくのかわいいお顔が、勿体ない」


黒の組織のバーボンとはわかっているのだが、

こう、なにかに誘われるのを断るのは、

やはり気が引けるわけで、

自然と顔に力が入ってしまうのだ。


安室さんは私の顔に手を伸ばし、

皺が寄っているであろう眉間に人差し指を当てた。


「僕も、女性の気持ちがわかっていませんでした。
すみません」

『いやいやいやいや。
日々貴方の言動から女性の気持ちがわかってらっしゃると思ってるんですけど』

「ハハッ、それなら嬉しいです」


絶対この人わかってる。

自分イケメンだってわかってる。

女性の心を鷲掴みしてるのわかってる。

この人ハニートラップ得意そう。

絶対得意だ。うん。


『送ってくださってありがとうございました』

「いいえ。
今日はAさんの名推理が見られてよかった」

『忘れていただけると幸いです』


あまりにも気恥ずかしくて視線をそらすと、

安室さんは「無理ですよ」とくしゃりと笑った。


(あれ、)




これは、初めてみる笑顔だ。



「そうだ、Aさんの好きな物を教えてください。
今度、ご馳走しますよ」

『ホント、尽くしてくれますよね…』

「Aさんにだけですよ」

『またまたぁ…』



くしゃりと笑った安室さんの笑顔は、

どこか優しく、

なんだか、素のような感じがした。


(気のせい、かもしれないけど、)


なんだかそれが、嬉しく思えて、


『じゃあ、ハンバーグが食べたいです』

と、笑った。




「…」


『………安室さん？』

「…え？あぁ、

ハンバーグですね。
随分とかわいらしいものをお好みだ」

『え、おいしいじゃないですか、ハンバーグ』

「おいしいです」




黒の組織の一員である、安室透。

油断できない男。


そんな彼が初めて見せた笑顔を見てから、

いや、

ストーカーから助けてもらったころから、




どうやら私は、

絆されてしまっているらしい。




(きっと新一には、怒られるんだろうなぁ)

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