Ψ後の晩餐4

第142χ ページ12

！！！

Aさんが……？
僕を？


Aさんは、外れて地面に落ちたリングから僕に視線を移した


｢……リングを外したくない理由、わかった？｣


………………


｢とりあえず、私の家の中入って……｣


玄関を開けたAさんに、促されるまま中に入る

リビングのイスに向かい合って座ると、Aさんが口を開いた


｢隠してたのに、バレちゃったね｣


今思えば、思い当たることはたくさんある
テレパシーが妨げられていたのもあり、気づかなかった

心の隅で、まだ知りたくないという思いもあったのかもしれない


｢心美ちゃん、斉木くんに抱きついてたね。いいなぁって思っちゃったの。可愛い子は何をやってもサマになる気がして、何をやっても許される気がして、羨ましいなぁって。そんな人に好かれてる斉木くんは高嶺の花だなって思っちゃって…………｣


……………………


｢要するに、嫉妬だよね、こんなの。私の勝手な想いでひどい態度とってごめんね｣


…………夏休み中、鳥束がAさんと肝試しをした際、怖いのが苦手なAさんをわざわざ怖いところに呼ぶのかと注意をした事があった

人の事を言えない
同じような事をした

Aさんは最初から今日のデートなんて来たくなかったのかもしれない
僕が行くかどうか聞いた時、確かに心の声で"行きたい"と言っていた

ただあの行きたいの本当の意味は、"2人で行って欲しくない"だったのかもしれない

結局僕は、思考の表面しか見ていない
心の声、すなわち本音
そう思っていた
その本音にも裏があることを、今思い知らされた


《……僕はやはり恋愛に向いてないな》

｢……ふふ、そうだね｣


！

意外だった
笑って返されるとは思っていなかった

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