Ψ後の晩餐7

第291χ ページ16

兄はヘリから吊り下げられた縄梯子に乗り危機を脱した


｢あれ？！お兄さん？！｣

｢？お兄さん？斉木くんの？｣


！！！


｢あれ？あそこにいるのAちゃんじゃない！行こう斉木くん！｣


なっ……！！やめっ……！


｢Aちゃーん！！｣

｢あ、心美ちゃん！……！！！斉木くん……？｣

｢……え？斉木くんじゃん……え……？｣


大賀さんは訳分からんという顔をしている
多分自分の家にいきなり来たAさんの経緯を知っているんだろう


これは……
もっと厄介な事になったぞ……


｢斉木くんが初詣に誘ってくれて来たの！……お隣はお友達？｣

｢あ、うん……｣

｢あーっと……ども…………じゃあ、私たちお参りするんで。いい男が現れます様にって｣

｢？うん……！またね、Aちゃん！｣

｢……またね、心美ちゃん｣


大賀さんはAさんの手を引き、去り際に顔だけを振り返り僕を睨む


(用事って、これだったんだね。楽しんで)


Aさんはニコリと笑うと、大賀さんと奥へ行ってしまった


今までに無い笑顔


とても冷徹で、凍てつく様な笑顔だった



｢……斉木くん？｣


踵を返し、家へ向かう

今はここにいる気分じゃない
悪いが、あとは1人で周ってくれ


｢ちょっと斉木！｣


兄さえ来なければ、こんな事にはならなかった

照橋さんが余計な事を言わなければ、弁解出来たかもしれなかった

今までに無いほど、腹が立つ


｢きゃあっ……！！地震？！｣

｢大きいな……！｣

｢みんな伏せてー！！｣


周りの人間達が騒ぎ立てる

その中を歩いて進んで行く


兄と照橋さん、その2人だけに腹を立てた訳では無い
1番腹を立てた人物は、僕自身だ

あの時、小説が届くと素直に言っていれば、こんな事にはならなかったのだ

小説を読み終わるまで待つと言われたら、待たせれば良かった

今すぐ行こうと言われたら、すぐ行けば良かった

それだけの事じゃないか

原因は僕だな
2人のせいにしてはだめだ


なんとか冷静さを取り戻した所で、地震が止んだ


僕を追いかけて来ようとしていた照橋さんは、地震によってよろめき周りの男たちがこぞって集まっていた為、その間に瞬間移動し帰宅した


｢あれ？楠雄、照橋さんは？｣

帰った

｢おかえり楠雄。だめじゃないか置いて来ちゃ｣

黙れ


今はお前の顔は見たくない


兄を一睨みし、自室へ入った

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