ep.13 逃げないから捕まえて。 ページ37
.
受験シーズンが終われば、やってくるのは春期講習。他の季節と比べてゆったりと流れるこの季節が私は好きだ。
｢あったかすぎて眠い〜｣
｢こらこら、起きて｣
ふわぁっと伸びをした里茉ちゃんと二人きりの授業。逆隣の席が空いているのは、もう彼はここで授業を受けることがないから。
｢ねえ、結局田中先輩とは付き合ったの？｣
｢…さあ、どうでしょう｣
春休みも真面目に塾へ通ってくれるJKに詰め寄られてもはっきりと返事ができないのは、私と田中くんの関係に決着が着いてないからだ。
｢どういうこと〜？｣
｢はいはい、そんな話はいいから授業しよ｣
｢そんな話、ではない！｣
せっかく松村先生が身を引いたのにって、北斗推しの里茉ちゃんは厳しい。なんで話してくれないのって身を乗り出してくる。
でも、これには理由があるのだ。
まず、田中くんの受験が終わったあと私がインフルエンザにかかったのが始まりだった。その後は田中くんの塾の研修、春期講習が重なり、私達はまだ2人きりご飯すら行っていない。
つまり私達、田中くんが受験に受かったあの日から信じられないくらいタイミングが合わなかったのだ。
だから、里茉ちゃんにお話しできるようなことは何も起きていないのは仕方ないでしょう？
｢あ、チャイム鳴ったからこの話に終わり！｣
｢先生ずるいよ〜｣
｢また今度話すから｣
｢絶対だかんね〜｣
ブーブー言いながらも聞き分けのいい彼女は、今回はちゃんと引き下がってくれた。でも次は逃がさないから感が強くてちょっと怖い。
…里茉ちゃん、北斗のこと大好きすぎるな。
｢じゃあまた来週ね｣
｢ばいばーい｣
きっとここから1歩踏み出せたらちゃんとお話しするからね。そう心で念じながら可愛くも鋭いJKのお見送りをする。
そうすれば背後に聞き慣れた声がした。ちょっと掠れた甘い声は、私が1番ドキドキさせられる声。
｢久しぶりに今日ご飯行きません？｣
こっそり囁かれた誘い文句に期待を込めた。
ゆっくりと頷けば、目をくしゃくしゃにして笑う君に心臓がバキュンて撃ち抜かれた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 855人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SixTones」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sail(プロフ) - ゆーみんさん» コメントありがとうございます！キュンキュンがお届けできて嬉しいです！ (2020年11月29日 16時) (
レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
ゆーみん - めっちゃキュンキュンしました！ (2020年11月29日 15時) (レス) id: 505bb2abee (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» タイトルの意味にまで気付いていただけてとても嬉しいです。これからもよろしくお願いいたします！ (2020年11月13日 13時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
早瀬(プロフ) - 完結おめでとうございます！最初は間違いなく樹の目線だったタイトルが、最後の最後で長谷川先生のタイトルになったこと、お洒落すぎました。素敵なお話をありがとうございました。次回作も楽しみにしています！ (2020年11月13日 10時) (レス) id: d923da9d53 (このIDを非表示/違反報告)
sail(プロフ) - 早瀬さん» コメントありがとうございます。想いあってたのにすれ違った2人を書いていて、私も切なくなりました、、、これからも更新頑張ります！ありがとうございます！ (2020年11月5日 19時) (レス) id: 68c0c1ca67 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sail
| 作者ホームページ：http://ma-no homepage
作成日時：2020年10月23日 11時
