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岩本「Aって、高校の時にふっかと付き合ってたわけじゃん?」
「は、はい……」
岩本「なんで別れたの?」
その言葉に、苦い思い出の箱を開ける。
「A……一体どうしたんだ。いつも学年一位のお前が、こんなに成績を落とすなんて」
私の成績が陰り出したのは、高校3年の11月頃だった。
体調でも悪かったのかと心配する担任に、私は言い訳も何もせず体調は万全だったと答えた。
「それならどうして……」
「次は頑張ります」
「…あ、ああ…期待してるぞ。Aはこの学校で唯一、名門大学に合格出来る人間だと期待されているんだからな」
期待っていう言葉は、足枷のようだ。
教師にも親にも迷惑な期待をかけられて、クラスメイトには一線を置かれて。
それでも、私には辰哉くんがいる。
それだけで、周りなんかどうでもいいと思えるほど強くなれた。
でも、あの時の私は気付いてなかった。
私は強くなれたのではない。
彼の存在で、逆に弱くなってしまったんだ。
深澤「今日は塾ないわけ?」
「あー……、うん。前より塾少なくしてもらったんだ。もう大学受験の対策は十分にわかったし、自宅でも勉強出来るからさ」
深澤「へぇ〜、そうなんだ。ま、俺としては会える時間が増えて嬉しいけど」
彼と一緒にいるためなら、嘘もつけるようになった。
本当は塾を無断欠席している。
こんなことがバレたら、親に怒られる。
「ねぇ、辰哉くん……」
深澤「ん?」
自転車で私を運んでくれた海が、すっかり私たちのデート先になっている。
海水の冷たさにはしゃぎながら、辰哉くんはこっちを向いた。
「私たちの関係がバレたら……別れるんだよね」
自分で言った条件なのに、後悔している自分がいた。
今の私には、辰哉くんの存在が必要不可欠になってしまったのだ。
深澤「それだけどさ……やめにしない?」
「……え?」
深澤「バレたとしても……じゃあ、別れましょうって、無理だと思うわ。もうAのこと、離してあげらんないくらい好きだから」
この時の想いを表現出来る言葉は、今でも見つからない。
とにかく胸がいっぱいになって、心が温かくなったことを覚えてる。
でも、当然のように幸せは長く続かなかった。
塾を無断欠席していたこと、成績が落ちていること。
そして、辰哉くんとお付き合いしていること。
全て、親にバレてしまった。
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サイ(プロフ) - takkimakkiさん» 初めまして、とても嬉しい感想ありがとうございます!皆さんに伝わるように丁寧に綴るのを心がけていたので、そう言っていただけて嬉しいです。不定期更新ではありますが、これからも見守っていただけると励みになります(^^) (2023年3月18日 20時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - 初めまして!このお話に出会い、一気読みさせていただきました。お話の中に引き込まれて、頭の中でドラマのように思い浮かぶステキな日本語と物語で、大ファンになりました。これからも楽しみにさせていただきます! (2023年3月16日 9時) (レス) id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - サイさん» え、そんなッッ‼︎あんな駄作達なんか、サイ様の足元にも及びませんからッッ‼︎でも、アドバイスなど。気付いた点を教えていただけると幸いです。 (2023年1月2日 23時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
サイ(プロフ) - にふらー@低浮上さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます◎細かいところまで見てくださってるんだなと思い嬉しくなりました◎更新頑張ります◎にふらーさんの作品も、時間がある時に読ませてもらいたいなと思います◎ (2023年1月2日 12時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - コメント失礼しますッッ‼︎『前の席の岩本くん』が大好きで、作者様が同じだとわかって、心の中で発狂しました笑笑 サイ様の文の書き方など、勉強する点が沢山あるので、続きがとても気になります…‼︎更新、頑張ってくださいッッ‼︎ (2023年1月2日 0時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サイ | 作成日時:2022年11月23日 19時