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こうして、男の人と二人きりで出かけるなんていつぶりだろう。
本当に心が躍るようなデートをしたのは、きっと高校の時だ。
特別なことはしていない、その人が隣にいるだけで楽しかった。
疑心暗鬼から始まった恋だけれど、あの時私は心の底から深澤くんが好きだった。
岩本「――さん。……Aさん?」
「……っえ?」
岩本さんの声で、私の耳にカフェの喧騒が戻ってくる。
顔を上げると、少し困ったように笑った彼はメニュー表に視線を落とした。
岩本「俺は、チョコケーキ……Aさんはって聞こうとしたら、何か考えこんでるみたいだったから」
「ご、ごめんなさいっ! 少しぼーっとしてただけで……えっと、私は……あ、シフォンケーキで……」
「了解」と笑って注文をしてくれる岩本さん。
可愛らしいカフェでのアフタヌーンティー。
岩本さんが、行きたかった場所らしい。
美味しいと評判のこのお店に、男が一人で入るには勇気がいるからと少し照れくさそうに笑っていた。
甘いものに目がない岩本さん、きっとこういう思いを何度もしているんだろうな。
私も甘いものは好きだから、このお店に来れてすごく嬉しい。
やがて店員さんが運んできたケーキを岩本さんは美味しそうに食べていた。
目を細めて、顔をくしゃくしゃにして笑って。
何度見ても思う、これが岩本さんの最大のギャップだと。
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サイ(プロフ) - takkimakkiさん» 初めまして、とても嬉しい感想ありがとうございます!皆さんに伝わるように丁寧に綴るのを心がけていたので、そう言っていただけて嬉しいです。不定期更新ではありますが、これからも見守っていただけると励みになります(^^) (2023年3月18日 20時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
takkimakki(プロフ) - 初めまして!このお話に出会い、一気読みさせていただきました。お話の中に引き込まれて、頭の中でドラマのように思い浮かぶステキな日本語と物語で、大ファンになりました。これからも楽しみにさせていただきます! (2023年3月16日 9時) (レス) id: ff744b84c3 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - サイさん» え、そんなッッ‼︎あんな駄作達なんか、サイ様の足元にも及びませんからッッ‼︎でも、アドバイスなど。気付いた点を教えていただけると幸いです。 (2023年1月2日 23時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
サイ(プロフ) - にふらー@低浮上さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます◎細かいところまで見てくださってるんだなと思い嬉しくなりました◎更新頑張ります◎にふらーさんの作品も、時間がある時に読ませてもらいたいなと思います◎ (2023年1月2日 12時) (レス) id: 0e52adef77 (このIDを非表示/違反報告)
にふらー@低浮上(プロフ) - コメント失礼しますッッ‼︎『前の席の岩本くん』が大好きで、作者様が同じだとわかって、心の中で発狂しました笑笑 サイ様の文の書き方など、勉強する点が沢山あるので、続きがとても気になります…‼︎更新、頑張ってくださいッッ‼︎ (2023年1月2日 0時) (レス) @page18 id: 6304bb2060 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:サイ | 作成日時:2022年11月23日 19時