３ 妖魔の王 ページ3
次々と運び込まれる贅を尽くした料理、酒。
「普通の料理？」
「当たり前だ」
「人の肉とかじゃないよね」
「そんな物食わんわ。
普通の地上の材料を使った普通の美味い料理だ。
酒もな」
何時もの笑顔に雅紀が涙ぐむ。
そんな雅紀を智は抱き寄せ頬を撫でる。
「疲れたろ、しっかり食べてしっかり寝ないと明日も仕事だよ」
「あ…でも、あの２人どうなるの？」
「代理を立てるよ。
顔など変える事など造作もない」
「そうなの？」
「ああ、大丈夫だ」
そう言った後、２人の妖魔を呼び付けた。
妖魔の例に漏れず美麗で優雅に智の前に跪く。
「お呼びでございますか、我が君」
「我らのメンバーの２人が目覚めた。
そして今はメンバーとしての記憶がない。
あるのは神の命のみ。
それ故、汝らあれらに代わってメンバーとして仕事をやってくれ」
「我らで宜しいのでしょうか？」
「その為に呼んだ。
来るがよい」
近くに呼び寄せ、その顔をそっと撫でた。
それから徐に口付けた。
扇情的で甘美な口付け。
そしてもう１人にも……
見る間に２人は雅紀や翔も知る人物その人となった。
「嘘……」
「渡した記憶のまま行動するがよい。
余への言葉使いも人に習え」
「恐れ多くも……したが我が君の命ならば、しかとやり遂げましょう」
「ならば…その前に飲んで行くがいい。
我が興のための席、許す故」
やり取りを見詰める雅紀の目は大きく見開かれ口も開いたままとなっていた。
メンバーがメンバーに平伏す有り得ない光景に。
杯を飲み干し下がる２人の妖魔を見送り漸く翔が口を開いた。
「我が君……私とて状況がよく飲み込めないのですが、どういう事なのでしょうか？」
「何処からだ？」
「先ずは２人の事から」
そう最も気になるのは自分たちに剣を向けた２人の事。
「おしゃべり和也は健在であった」
「と言うと？」
「話してくれたさ、おしゃべり故。
元々、天上と地上、そしてこの地底とは時の流れが違うのはわかるか？」
「どう違うのですか？
時は平等に流れる物でしょう？」
「そうだ。
時は平等に流れたとしても時に住まう個々の寿命の違いで感じる時の流れは違って来る」
「どう言う事ですか？」
「人間の一生など我らにも神にも刹那の時間。
神は先に来るであろう危機に対してあの２人を作ったようだ。
そしてそれっきりだ」
「それっきり？」
「そう……それっきり。
一切の関心を消し去った。
神の常に漏れず……」
妖しく微笑んだ。
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蒼羽(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます。妖艶な王様さとさん楽しんでいただけてよかったです。私が書くとほわほわしてしまうので。格好良いさとさん目指しているんですけどね。そう言いつつ格好良いからは少しズレてますが……完読ありがとうございました！ (2021年10月18日 13時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - 完結お疲れさまでした！面白かったです。妖艶な王を想像するのが楽しかったです！ (2021年10月18日 7時) (レス) @page47 id: 6d225d7753 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼羽
| 作成日時：2021年9月28日 2時
