１７ 人であった頃 ページ17
『……ここは？』
「俺の地上での部屋だ。
おまえは何度も来てる筈だが覚えはないか？」
『……………』
「まぁいい。
いずれ思い出して貰うさ。
先ず……飲むがいい」
暁の天使にグラスを差し出す。
グラスの中の熟成した赤いワインの芳醇な香りが鼻腔を擽る。
『……これは…』
「………何もかも忘れたか。
このワインはおまえが俺に持って来た物だ。
次に来た時に開けて飲もうと言ったのも、おまえ。
だから飲め」
受け取ったまま立ち尽くす天使のグラスに智は自分の手にあるグラスを合わせた。
「このグラスもおまえがここに持って来て置いて行った物だ……」
それだけ言ってグラスに口を付けた。
「美味いな。
流石……潤が選んだワインだ。
名も無き暁の天使よ……おまえが人として過ごした時に得た知識で選んだのだ。
よく味わえ」
静かにグラスを傾ける智に習って天使もまた…グラスに口を付けワインを口に含んだ。
「美味かろう？」
『…………』
「わからないか。
そんな事まで忘れたか。
まぁいい、おいで………潤」
天使からグラスを取り上げ代わりに口に含む。
そしてそのまま……天使のそれに口付け………流し込んだ。
それを舌を絡ませ味わう。
少しずつ熱を上げて行き…天使がそれを飲み干すと離れ誘う。
「さぁ、これからは俺のターン。
妖魔の流儀を教えてやるよ。
潤にはそこまで教えてはなかったが……名も無き暁の天使よ……おまえには存分に教えてやろう」
神に創られ使命だけを与えられたが、他には何一つ与えられなかった天使は…ある意味、純粋無垢な存在だった。
妖魔の王に手を引かれ扉の１つを開いて誘われる。
陽の光を完全に閉ざした部屋の中……あるのはベッドのみ……その上に何も知らない天使を横たえた。
「妖魔が最も得意とし好む事は快楽だ。
これまで人並みに抑えていたが……今のおまえは天使。
妖魔の手練手管の全てを使い、天国以上の天国に連れて行ってやろう。
天へは戻れぬ………おまえを…」
妖魔の魔術により着衣は一瞬にして消え去り生まれたままの姿となる。
「本当に……綺麗だよ。
人間が造る神々の像の如く……否……それ以上か……否……神々は最早、肉体を持たない。
肉体があれば楽しめる事もあると言うのに……勿体ない事を……」
肉体があるが故にその身を舌で唇で指先で触れ、その滑らかな手触りを楽しめる。
「怖がる事は何もない。
全て俺に任せておけばいい……」
優しく妖しく微笑んだ……
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 169人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
蒼羽(プロフ) - みみさん» コメントありがとうございます。妖艶な王様さとさん楽しんでいただけてよかったです。私が書くとほわほわしてしまうので。格好良いさとさん目指しているんですけどね。そう言いつつ格好良いからは少しズレてますが……完読ありがとうございました！ (2021年10月18日 13時) (
レス) id: f9ecf164e6 (このIDを非表示/違反報告)
みみ(プロフ) - 完結お疲れさまでした！面白かったです。妖艶な王を想像するのが楽しかったです！ (2021年10月18日 7時) (レス) @page47 id: 6d225d7753 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：蒼羽
| 作成日時：2021年9月28日 2時
