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昨夜から何も食べてないけど
空腹感すら感じない
消毒臭い自分の服も髪も体も
全てが妙に気持ち悪くて
充電の切れたスマホ、
着ていた服から鞄、時計に至るまで
全部ゴミ袋に詰め込んで
身体中の匂いを消すようにシャワーを浴びた
適当に髪と体を拭き
備え付けのワンピース型ルームウェアに着替え
ソファに沈む
体が元気なって1つ、分かった事がある
心の不調を間近に感じるって事
熱で浮かされてるくらいの方が気持ちが楽だ
良くわからない
何が？
何もかもが
深く思考が動かない
ただ心を握りつぶされるような感覚だけが
まとわりついている
目の前に置かれた
ビニールに入った薬袋
心を落ち着かせる薬なんて
なんで処方されたんだろう
こんなに落ち着いてるのに、今
…これもいらないな
立ち上がり
ビニール袋のままゴミ袋に入れた
その時
デスクに置いているいつもの缶が目に入る
これ飲んでても…治らなかったから
これもいらないかな
缶ごと捨てようとした時
描かれた笑顔のキャラクターと目があった
誰かの笑顔が頭を過る
蓋を開け
中身だけを捨てた
心が凍ってしまったかのように
何も感じない
部屋に置いていた私物は
全部要らない気がして
何かも確かめずゴミ袋に入れていく
ん、部屋が綺麗になった
手に持ったゴミ袋を見下ろすと
中身は何故かキラキラして見えた
二度と戻れない
明るくて楽しかった過去をかき集めて
閉じ込めた宝箱みたいだ
答えなんて聞かなくてもわかるよ、先生
二度と戻れない
再来週なんて待たなくていいのに
袋の口を緩く縛って
窓際の目立たない所に置いた
残ったのは
空の缶
青いパジャマ
指から抜け落ちたリング
伏せたオレンジの写真立て
色あせた黒いキャップ
これが大切な物ってのは分かる
ゴミ袋に入れたものも
涙が溢れそうな程に大切な物もあるけど
…
なんだか凄く疲れた
もう…寝よ
新しい薬は眠くなるんだっけ
飲まなくても眠れるけど
深く深く眠りたくて
ゴミ袋から1シート取り出して
適当に口の中に放り込み
そのままラムネのように噛み砕いて
唾と共に飲み込んだ
口や喉に少し違和感があるけど
胃に落ちたのは感じた
再びソファに体重を預け目を瞑る
幸い、目を瞑るとすぐに寝てしまう程に
眠くて眠くて仕方ない
落ちていく意識に
少しでも長く眠れるようにと
僅かに正常に動く頭で祈った
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年6月8日 10時
