463.黄色Side ページ41
帰り道のAは、
若干疲れが見えるけれど
とても上機嫌やった
さっきまで一緒に居た奴等と話した事を
ケラケラ笑いながら俺に伝える
数分前に
あんな悲しい涙を流していたなんて
信じられないほどに
『照史から私の記憶消して、私も消えたい』
そんな風に思っているなんて
想定外すぎて
何も言えなかった
上手く行かない時に
何もかもリセットしたいって感覚は
わからん事もない
でも
『私も消えたい』
こんな言葉を口にするなんて
沙耶ちゃんから指摘されても
照史への口止めはすれど
撤回することはなかった
流星が見た『記憶を飛ばした彼女』
新しい薬を乱雑に飲んだ事
照史の家に突然来て泣きはらした事
俺の中にはモヤモヤが溜まる一方
照史の家から彼女の家まで
タクシーで20分
既に走り始めて5分経った
どう切り出そうか
アルコールの入った頭で考えていると
彼女がグンと俺の腕を引いた
「ねぇ淳太くん！聞いてる？」
「ん、え？あ、スマン
考え事しとった」
無視するなと膨らませた頬が可愛くて
軽く摘んでクイっと引っ張る
こうして見ると
酒のんで上機嫌になった
昔と変わらない無邪気な彼女なのに
「明日早いの？」
「そんなことないで」
「じゃ、久しぶりに2人で飲まない？
たまには淳太くんと話したいな」
思いがけない彼女からの誘いに
俺は2つ返事でOKした
・
彼女の指示で止まったタクシーを降りると
某有名高級ホテルの前
迷うことなく隣の高層ビルに向かう
彼女の後ろを慌てて追いかける
このビルの高層階には
朝方まで開いてるバーがある
決して安くはないココは
セキュリティも厳しい
一見さんお断りの会員制
会員になるのも
それなりの人物からの紹介が必要
入会金も決して安くない
慣れた手つきでセキュリティ解除して
入口のガードマンと笑顔で話している
個室に案内され
向かい合わせに置かれたソファに
それぞれ座ると
少ししんどそうな表情で
ソファに体を沈めながら
フゥーと長く息を吐いた
「お前、この店知ってたんやな」
「ここなら安心して飲めるでしょ？
酔い潰れてもすぐ帰れるしw」
そう言うと体を起こして
慣れた口調で
まぁまぁ強いカクテルを注文した
「すぐ帰れる？」
彼女の家はここから車で10分以上先
すぐなんて距離ではない
疑問をぶつけると
サラリと答えた
「あ、昨日から隣のホテルに居るの」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：向日葵 | 作成日時：2022年6月8日 10時
