460. ページ38
「なぁA
照史の気持ちとか仕事とか
そんなん全部置いといて
Aはどうしたい」
黙って聞いていた淳太君が
Aちゃんの前にしゃがんで
優しい声で聞いた
「そうだよ
Aちゃんの気持ちは？
出来る出来ないは関係ないよ」
そんな私達の言葉に
俯いて肩を震わせながら
ゆっくりと口を開き
「照史から私の記憶消して…
……
……
私も…消えたい」
と静かな声で言った
一瞬目があった淳太君は
酷く悔しそうな顔をしていた
一緒に居たいとか
結婚したいとか
そんな言葉が来ると思っていた
「好きなんて…言わなきゃよかったｯ……」
しゃくりあげて泣き出したAちゃんを
出来る限りの力で抱きしめる
抱きしめても抱きしめても
Aちゃんの感じてる寂しさを拭える気がしない
ここで照史を呼ぶのも違う気がする
私が謝るのも違う
じゃあどうしたらいいんだろう
わからなくて
わからなすぎて
ただただ一緒に泣いていた
しばらくして
少し落ち着いたAちゃんが
顔を上げる
「沙耶ちゃん…
また楽しい写真送ってね？」
もうAちゃんが
一緒に見ることは出来ない景色を
私なら隣で見れるから
寂しがり屋の照史を
支えてあげて欲しいと
静かに優しい笑顔で言った
「ん、いっぱい送る
新しいアルバムも送るね」
「ありがとう」って言いながら
私の涙を拭う優しすぎるお姉ちゃん
その優しい手を握る
「消えたいなんて言わないで
そんな事…言ったらダメ…」
「ごめん、ちょっと喋り過ぎたw
照史には絶対秘密ね！一生秘密」
明るく返す声も
また静かに流れた涙も
Aちゃんの頭をそっと撫で
静かに部屋を後にする淳太君の背中も
何もかも悲しくて
2人で抱きしめあって
しばらく泣いていた
・
「照史くん、そろそろ帰るね
みんな、またね」
「んぁー！まって！」
涙が落ち着いた所でリビングに戻り
明日は朝早いAちゃんが帰ろうとすると
照史は呼び止めて寝室へ引っ張っていった
10分程で戻って来ると
「飲み過ぎたら駄目だよ」
「わーかってる！」
なんてニコニコしながら話す2人
「俺も帰るわ」と立ち上がった淳太君が
Aちゃんにキャップを被せる
それがスイッチになったのか
完全に彼等の後輩に見えた
照史と一緒に玄関で2人を見送る
ドアが閉まった直後に
照史の胸ぐらを掴んだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：向日葵 | 作成日時：2022年6月8日 10時
