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確かに矢面に立たされてるけど
そういう事も一定レベルで覚悟して
私達は、この仕事してる
一番しんどいのは
Aちゃんだと思うけど
「私は、照史に幸せで居てほしいだけ」
「だからって我慢しすぎ」
「仕事も趣味も
好きな事沢山して笑ってて欲しい
本当にそれだけなのに
なんで…
上手く行かないんだろうね…w」
目に薄く膜が張ると
くるりとリビングに背を向けた
「寂しがり屋って知ってるのに
側に居ることも出来なくて
誰よりも繊細って知ってるのに
……
私と付き合ってから
死ぬまで経験しなくてもいいような事で
傷付けてばっかり」
「Aちゃん、そんな事ない
照史、私達と居ると
ずーっと惚気けてんだよ？
Aが可愛い可愛いって」
「………ﾌﾌ」
笑っているのに
頬に涙が流れたAちゃんを
ゲストルームへ連れ出す
騒ぐバカ共に見つからないように
静かに部屋を出た
廊下でトイレから出てきた
淳太君と鉢合わせる
Aちゃんの様子に気が付いて
心配そうに名前を呼ぶ
さすが
鈍い照史とは違う
淳太君の手も引いて
ゲストルームへ入った
ベッドの端に座ると同時に
Aちゃんが口を開く
「沙耶ちゃん
照史の事、よろしくね」
「…え？」
「私、照史と別れるから」
「………本気で……言ってるの？」
私の目をまっすぐ見据え
深い悲しみを纏った表情で
口角を少し上げた
「本気だよ
私は、照史の仕事もプライベートも
全部全部大切にしたいの」
「だからって…」
「前に私との写真が出た時は
本当に酷く叩かれた
背筋が寒くなる程に
でも相手が沙耶ちゃんだって分かったら
歓迎ムードに一転した」
「あれは誤解じゃん」
「誤解でもなんでも…
ファンも事務所も歓迎してる
私じゃだめなのは明確
照史がアイドルって仕事してる以上
決して切り離せないから」
「それは…」
「私に出来ることは
世間の声を濁さない為に
手を離すことだけなの」
淳太君は表情を変えずに
私達の前に立って
腕を組んで話を聞いている
「そんな事ない」
「私はもう照史の好きな事
何も出来なくなった
その上で…
これ以上…ｯ
足を引っ張りたくない
これが…私が照史に出来る…ｯ
最後の事…だから」
口元に手を当て
必死に嗚咽を堪える彼女の指には
照史とお揃いのシルバーが輝いている
なんて悲しい光景なんだろう
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作者名：向日葵 | 作成日時：2022年6月8日 10時
