バレンタイン ページ48
「おはようツナー。はい、ハッピーバレンタイーン」
「ありがとうA!」
そう、今日はバレンタイン。女子も男子も浮かれるイベントの1つ。
バレンタインに関してどこか他人事だと思っていたツナが朝一番にAにチョコを貰い、感動で泣きそうになる。
「昨日頑張って作った自信作なので!」
その言葉で手作りなのだということは容易に想像できる。Aに好意を抱いている男子がツナを恨めしそうに見ていた。悔しさから涙を流している者すらいる。
「Aは他に渡す予定とかないの?」
「普段から仲良くしてる人には大体渡すつもりだよ? 京子ちゃんとか花ちゃんとかにも」
「ひ、ヒバリさんにも?」
「うん、雲雀先輩甘いの好きじゃないからわざわざ別の作ったんだよね。偉いと思わない?」
「あはは、偉いね?」
ただでさえAからのチョコというだけで羨ましいのに、他の人とは違う特別製のチョコを貰える雲雀を激しく羨んだが、どう足掻いても雲雀には勝てない。今夜貰えなかった男子たちは枕を激しく濡らすことだろう。
昼休み、Aは応接室に向かっていた。
「あれ、いない」
「どうかしましたか?」
「あ、草壁先輩。雲雀先輩お出かけですか?」
「はい。見回りに」
「珍しいですね」
「委員長は容姿が優れているので……一定数ファンが……」
「あぁ、恋は盲目っていいますしねー」
応接室の扉の横に机があり、その上には段ボールが。段ボールの中を覗くと色鮮やかにラッピングされた箱たちが。考えなくてもそれがチョコだということはすぐにわかることだ。
「ここに入れて帰るより直接渡した方がいいですよね……」
「そうですね……」
「んー……探してもいいけど絶対行き違いになる。放課後もう1回応接室に来ますね」
「はい」
「あ、これ草壁先輩のです。ハッピーバレンタイン」
「ありがとうございます」
応接室から戻ってきたAの手にまだ紙袋があることを見て花がすぐに駆け寄る。
「雲雀恭弥、受け取ってくれなかったの?」
「ううん、応接室にいなかっただけ。放課後もう1回行くんだ」
「わざわざ雲雀恭弥用にチョコ作ったんでしょう? 物好きね、あんたも」
「……そうかも。好きとかそういうのわかんないけど、雲雀先輩の横は落ち着くから」
いつもより穏やかな表情を見せるAを見て、せっかくのバレンタインだというのにクラスの男子は敗北を確信したのだった。
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作者名:うがつ | 作成日時:2022年9月18日 16時