風と嵐 ページ44
「正月早々雲雀先輩に振り回されっぱなしだった。今年もこうなるんだろうなぁ」
なんて言いながら暖かい格好をして歩くAの視界の端に見慣れた銀色が映った。
公園のブランコでタバコを吸う獄寺に声をかける。
「やぁ、獄寺君」
「……なんだよ」
いつもは喧嘩腰で来るくせになんだ？
不思議に思ったAは空いている方のブランコに座る。
「何かあった？ 暇だし話聞いてあげる。暇だし」
「暇って２回言うんじゃねえ！」
「そんなこと言われたって暇なのはホントのことだし」
獄寺が声を荒げたが、いつものような鋭さは感じられない。
「私はツナでも山本君でもないんだし、ちょっとくらいの弱音なら聞き流すよ？」
「…………オレって１０代目の右腕に相応しくないよな」
「さぁ、どうかなぁ。ツナはそういうの関係なく君のこと大切な友達だって思ってると思うよ」
「オレは！ オレは１０代目から頼りにされたいんだよ！」
「十分頼られてると思うけどなぁ。マフィアのことで何かあって困ったらツナが真っ先に頭に浮かべるのは君だと思うよ」
「それはオレがマフィアだからで、オレ自身を頼りにしてるわけじゃねーんだよ！」
「ふっ、獄寺君はゼータクだなぁ」
「は？」
「大体さ、遠慮しないツナってツナじゃないと思うのね。私。例え将来ツナがマフィアのボスになって、君が右腕になったとするじゃん。そうなってもツナは君に"ありがとう"も"ごめん"もどっちも言うと思うよ。言わないツナを想像できる？」
Aに言われるが、獄寺はそんなツナを想像できなかった。
「出来なかったみたいだねー。まあ不安になるのは誰だってあると思うよ。ツナは誰かを巻き込むことを極端に嫌うから。でも君は十分頼りにされてる。マフィアのことでも、勉強のことでも。まあ勉強に関しては私の方が頭よかったりすることもあるけど？」
「なっ！ この間のテストはたまたまだろ！！」
「ん、元気になった？」
「ッ！？」
獄寺の顔がほんのり赤くなる。自分が乗せられたことに気づいたからだろう。
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作者名：うがつ | 作成日時：2022年9月18日 16時
