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校舎裏、怪我した君 ページ14

入学式から数日経った日でもまだAはツナと会話らしい会話をしていない。

プリントを回す際に声をかけたりかけられたりすることはあるが、会話はしていないのだ。

とはいえそれはツナだけではない。他のクラスメイトとも当たり障りのない会話しかしていない。

Aに人見知りがあることも原因ではあるのだが、大きな原因は彼女がよく雲雀と出会ってしまっているということだろうか。

移動教室にトイレ、ほんの些細な移動でも高確率で雲雀と会う。

雲雀とAの間にこれといった会話はないが、分かりやすく無視なんかした日には咬み殺されるのではないかと怯えたAは合う度に控えめに会釈をしてそそくさとその場を去る、というのがいつの間にか日常になってしまっていた。


(もしかしなくてもマークされてる!? まだ一般人に擬態してるはずなんだけど!?)


一度神に自分に変なところはないかと聞くが、他の生徒と何も変わりはないと思うよと言われたため、もう打つ手なしなのだ。

猫のような、いや、猫以上に気分屋な雲雀恭弥の心情を誰が読み取れるのであろうか。

だから和音はあまり教室を出たがらなかった。放課後は何もない限りすぐ家に帰っていた。

だが現在和音はゴミ箱を両手で持ってゴミ捨て場へと向かっていた。掃除当番で誰がごみを捨てに行くかというじゃんけんで負けてしまったのだ。昔からじゃんけんが弱いAは内心ビクビクしていた。


「よし、クリア! 早く教室に戻ろう」


空のゴミ箱を持って教室へと戻ろうとすると、何やら声が聞こえてくる。

それがツナの声だと気づいたのと、和音が走り出す他のはほぼ同時だ。

校舎裏に行くと、既にそこにはツナ1人だけで、他には誰もいなかった。


「沢田君!」

「し、下風さん?」

「怪我したの?」

「う、うん、ちょっと……」

「これ、ドジってできたような傷じゃないよね。いじめられたの?」

「し、しょうがないんだ。オレ、ダメツナだし……」

「……保健室行こう。このままにしたら怪我したところにばい菌とか入るから、ほら行こう?」


手を差し出すと、ツナは恐る恐るその手をとった。

ツナはそれが自分を立ち上がらせるためだけの行為だと思ったのだが、意外にもその手はすぐに離れず、そのままAは手を握ったまま保健室へと向かおうとする。

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作者名:うがつ | 作成日時:2022年9月18日 16時

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