最恐の風紀委員 ページ11
なんとなく見たことのある景色。漫画の中にだけ存在していた景色。それが今自分の目の前に広がっているという現実がAの胸を躍らせた。
すごいすごいと声に出さないものの、表情には出てしまっていた。
地図を片手に歩き、まずは並盛中学校へ。十分もしないでAは中学校へと着いた。
近くて何よりである。地図を持ち、次は商店街にでも行こうかとAが振り返ろうとした時、Aの耳に声が飛び込んでくる。
「ねぇ、何してるの?」
がばりと勢いよく振り返るとそこには学ランを肩に羽織ったAと同い年くらいの黒髪の少年がいた。
その少年が雲雀恭弥という今Aがいるリボーンの世界で指折りの強者であり、戦闘狂であることを知っていた。知っていたからこそ背中に嫌な汗が伝っていくのがよくわかった。
言葉が詰まりそうなのを何とか取り繕い、Aは声を発することに成功した。
「明日からここに通うから、引っ越してきたばかりなので道順の確認を……」
「ふぅん……入ってみるかい?」
「なんっ……い、いいん、ですか?」
まさか会って数秒で最強で自分ルールで生きている雲雀からそんな提案をされると思っていなかったAは反射的に「何でですか」と聞きそうになるのを途中でグッと堪え提案を受け入れた。断るという選択肢を取ることは出来なかった。
そのまま雲雀は先ほど自分で言った通りAを校舎の中へ招き入れる。
招き入れただけで驚きなのに、雲雀は簡単に校舎内の説明もしてくれた。説明といっても教室の名前だけで、そこで何をするかなどの具体的な説明は一切なかった。
「君は下風Aだよね」
「はい。……はい? なんで名前……」
「ここが1−A。君が明日から通うクラス」
「名前もクラスも、何で知ってるんですか?」
「僕だからね」
答えになっているようでなっていない。さすがは雲雀恭弥だとAは妙な納得をしていた。
全校生徒の名前を憶えているというのだろうか。
だが覚えているのは最初だけかもしれない。後々弱い人物、ただ群れるだけの人物だと雲雀が認識すればそれはたちまち「草食動物」という雲雀が咬み殺すべき大勢のうちの一人となってしまう。Aがそうなることは恐らくないが。
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作者名:うがつ | 作成日時:2022年9月18日 16時