視線、交わる。 (ページ5)

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5話ページ5

迎えたテスト当日。

前日には、頑張るねと一言くれた〇〇に“変なとこでミスすんなよ”とは伝えたものの、心配そうな表情を浮かべる〇〇を安心させてやれるような言葉は何ひとつかけてやれなかった。

結局その後も授業はあるものの、何となくテストのことを聞くのは気が引けたままテスト返却の日になった。

生徒が続々と笑顔で点数を告げにくる中、いま来たばかりなのかカバンを持ったままAは薄ら涙を浮かべながら“ごめん”と一言謝ってきた。

廉『……どないしたん、いつもとちゃうやん』

『……ごめん、取れなかった……』

しわくちゃになったAの回答用紙。

テスト返却の時に我慢しきれなかったのか、テスト用紙には微かに涙の跡が残っていた。

廉『………そこの部屋入ろか、』

リュックを背負ったままのAと空き部屋に入る。

怒られると思ったのか、Aはずっと俯いていた。

廉『………Aはさ、悔しい？』

『………(ｺｸ、』

廉『……ほんなら心配ないよ』

『、え、？』

廉『だぁいじょうぶよ、これからやん』

　『悔しいって思えるんやったらこれからもずっとずっと伸びてくんやから』

　『……な、？もう安心し！そんなんすぐ伸びるわけでも無いんやし、にしても10点も上がってるやん！』

　『なに、もっと取れると思ってたん？笑』

『、なっ、！』

廉『何点？笑』

『面白がらないでよ、笑』

廉『70とか？笑』

『………まぁそうだけど』

廉『んはははっ！笑』

　『お前のこと信じてなかったわけやないけどAのことサポートするんは今回のテストだけちゃうやん、』

　『俺がAの担当外れたかってずっと分からんとこ教えたる』

　『ほら、安心してシャキッとせぇ！笑』

わしゃわしゃ、と髪をぐちゃぐちゃにすれば“やめてよ、”なんて笑顔をこちらに向けるA。

安心した様子のAは、笑顔に目を細めると一筋の涙を零した。

廉『、ふはっ、笑』

　『もー終わったことなんやし泣きなや笑』

『んっ、、、涙』

廉『明日までにやり直し提出な』

えっ、ってびっくりした顔でこっち見てくる。笑

廉『ちゃんと出せよ、見たるから』

ポンっ、とすれ違いざまにAの頭に手を乗っけて教室を出た。

いい点取らしてやれんくてごめんな

そう思ったんを、今でもはっきり憶えてる。