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とある高校の昼時の教室にて、四人の少年少女が狭苦しそうに二つの机を囲んでいた。
その四人のうちの一人である我妻善逸は、目の前でいちゃつく二人の男女を嫉妬に塗れた視線で見つめていた。
「はい、炭治郎。あーん」
少女はにこにことした表情で炭治郎という名の少年に箸で掴んだ卵焼きを差し出す。
炭治郎はその卵焼きをぱくりと口に含めると、どこか嬉しそうに微笑んだ。
「今日のAの卵焼きは美味しいな!」
炭治郎のその言葉に、Aはにこにこと機嫌よさげに箸を握りしめながら言った。
「でしょ? 今回はちゃんと焦がさずに作れたからね!」
「それはすごいな!」
目の前で繰り広げられるまるでカップルのようないちゃつきを善逸はじーっと見つめながら大きなおにぎりを一つをぱくりと平らげる。
お茶とともにごくりとおにぎりを胃に流し込みながら、善逸は表情を変えることなく目の前でいちゃつく二人組に言葉を放った。
「お前らってほんと恋人みたいに仲良いよな」
善逸の急な脈絡のないその話題に二人は驚いたように目をぱちくりと瞬かせた。しばらくすると二人はくすくすと笑いながら善逸に向かって言った。
「まあ確かにそうかもな。俺達は生まれた頃からずっと一緒だもんな」
「そうそう。十数年も一緒にいれば恋人っぽくも見えるよ」
「……」
善逸はそんな二人を何か言いたげに見つめるが、口を開きかけたところで一緒の机で食事をとっていた嘴平伊之助が唐揚げを口の中に頬ばりながら不思議そうに訊ねた。
「ほいふぃとってなんあ」
「伊之助、食べながら喋らないの」
Aのお叱りに伊之助は素直にもぐもぐと唐揚げを咀嚼し、口の中の唐揚げを食べきると再び同じことを訊ねた。
「お前らが言ってた、『こいびと』ってなんだ?」
「何だ伊之助そんなことも知らないのかよ」
「アア゛ン⁉」
「はいはい、二人とも喧嘩しないで」
善逸のあからさまな煽りに伊之助はその整った顔を不機嫌に歪ませる。Aは二人の間に入って喧嘩に発展しないように仲裁しながら伊之助の疑問に答える。
「恋人ってのはそうね。うーん……。わかりやすくいえばお互い好き合っている男女、かな?」
その答えに伊之助は、炭治郎とAの二人を指さしながら言った。
「――……じゃあ、二人は恋人じゃねえのか?」
その瞬間、教室内の騒がしい喧騒が聞こえなくなった。
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作者名:さぬやぎ | 作成日時:2020年4月13日 13時