失いたくない ページ42
高級スイートの部屋はかなり広く、ベランダまでついている
キングサイズのローベッドがあり、映像電伝虫が映す大きなスクリーンもついていた
「うわぁ、眺め最高。ってしかも露天風呂もあるじゃん」
「あの男いつもこんなの泊まってんじゃねェだろうな」
「泊まってるよきっと。経費で」
「はァ。もう泊まるしかねェんだ、気にするのはやめだ」
ベランダにあるベンチにどかっと座ったスモーカーはふぅと煙を吐き出してくつろぎ出したので、Aは一旦部屋に入り付属のお茶を用意した
「(今更だけど…クザンさんどこまで知ってるんだろ。私たちの関係知ってるのはヒナさんとたしぎちゃんぐらい…)」
元気がないように見えたからスモーカーとの時間を作ってくれたんだろうが、もしまだ昔のような兄妹みたいな関係だったらこの部屋どうすんだって話だ
「(あの人勘いいからな…)」
ま、いいか。とポットを置いて、お茶をべランダへ持っていきスモーカーの前に置く
もう夕日が沈むときで、Aは柵にもたれ水平線を眺めた
スモーカーはその後ろで夕日を眺めるAの後ろ姿を見ていた
儚げなその背中に今朝のAの涙を思い出す
「(何を背負ってんだ、その背中に。俺には分けれねェのか)」
無性に触れたくなって、後ろからすっぽりと抱きしめた
「っスモーカーさん…？」
「A」
「っんん…」
首筋に顔を埋め小さく紅を咲かす
振り向いたAに口付けだんだん深く味わっていく
口を離すと少しとろんとした目のAと目が合う
後ろの夕日が水平線に沈むのと一緒に、またキスをした
---
その後、運ばれてきた夕食に舌鼓を打つ
さすが高級宿だ。絶品な料理ばかりだ
何気ない会話や、最近の海賊事情など、2人とも少しお酒を飲みながら夕食を楽しんだ
「お腹いっぱい…」
畳にゴロンと寝転がる
スモーカーは食後の葉巻を吸いに外へ出ていったので
1人でぼーっと天井を見つめていた
すごく楽しい。大好きな人とこんな風に一緒に居られて、幸せだと感じる
でもやっぱり頭の片隅にあるのは、一族の生き残りなのかもしれないという事。
もしそうであれば、きっと海軍にはいられなくなる
そうなれば、スモーカーとも…
全てを裏切ることになるかもしれない
真実を解き明かすべきなのか
怖くて、答えが出せないでいる
いや、本当は出ている
ただ失いたくなくて、すがりついているだけだ
両腕で顔を覆うと、涙が頬を伝った
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 68人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Ancop | 作成日時：2023年3月16日 15時
