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彼女がいる病院は、僕が住んでいる街からわりと距離があった。
なんであんな離れたところまで来てたの?と尋ねたら、暇だったから!という単純な答えが帰ってきて、それもそうだよなと納得する。
如月Aとネームプレートに書いてあるのを見て、疑っていたわけじゃないけれど、改めて彼女は本当に"幽霊"なんだな、と思った。
ノックをして病室のドアを開くと、既に先客がいた。
Aちゃんに良く似た、若い女の人だった。
目が合うと、その人はにこやかに笑った。
「...おかあさん...」
Aちゃんの泣きそうな声に、思わず息を呑む。
早く元の身体に戻って、お母さんと色んな話がしたいだろうな。
そんなことを思いながら、挨拶する。
「こんにちは、お邪魔します」
「こんにちは。男の子が来てくれるなんて初めて...もしかして彼氏さんかしら?さすが私の娘、見る目があるわぁ〜」
僕は苦笑いしながら言った。
「いいえ、僕はただの...友人ですよ。」
「あらそうなの?残念、王子様のキスで起こしてもらおうと思ったのに」
冗談めかして笑う母親をAちゃんが呆れた目で見る。そして顔を赤くしながら言った。
「ごめんね野坂くん、気にしないで...こういう人なの...」
僕はふっと口元を緩めて頷いた。
「...怪我されたのは、目だけ、なんですか?」
ベッドの上に横たわっている"彼女"を見ながら、僕は本人に直接聞けずに気になっていたことを尋ねた。
「ええ、幸い身体は打撲だけで済んだの。だけど...はねられた時にメガネが割れて、運悪く破片が突き刺さっちゃって...左目はもう、一生見えないんですって」
僕は目を見開いた。まさか...失明してただなんて。一生、という言葉がずしりと重くのしかかる。
「その事は辛いけど...命は助かって本当にほっとしたし嬉しかった。あとは意識さえ戻ってくれれば...私の願いはそれだけ」
「....大丈夫。きっとすぐ、必ず、戻りますよ」
僕が力強く言うと、彼女の母親はありがとう、と優しく言った。
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チェレステ(プロフ) - 杳覇さん» 私も杳覇さんが大好きです〜〜〜!!(号泣)鬱陶しいなんてとんでもないです!これからも気が向いたら気軽にコメントしちゃってください!続編の方でもどうぞよろしくお願いします!(*´∀`*) (2020年5月16日 18時) (レス) id: 2dc5e30747 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - 豪炎寺くんが最初っから最後までカッコ良すぎる大好きですこのお話!!!ひえええ次回最終回!?ううっ…楽しみに待ってます(´;ω;`) 短期間で三度目のコメントすみません…!!鬱陶しくなったらいくらでも無視して下さって構いませんので!!チェレステさん大好きd(( (2020年5月14日 20時) (レス) id: 14ae3b839b (このIDを非表示/違反報告)
チェレステ(プロフ) - 杳覇さん» あああ二度もコメントをしてくださりありがとうございます!!とても励みになります(号泣)貴方様のような素敵な読者に楽しでもらえるような執筆を目指してこれからも頑張ります!!どうぞよろしくお願いします!!! (2020年5月14日 11時) (レス) id: 2dc5e30747 (このIDを非表示/違反報告)
杳覇(プロフ) - ああああ豪炎寺くんすでに最高っ…!!すみません感情が昂ってしまい思わずコメントしてしまいました……!!続きが凄く楽しみです!!ずっと応援しています!! (2020年5月12日 22時) (レス) id: 14ae3b839b (このIDを非表示/違反報告)
チェレステ(プロフ) - 杳覇さん» まだ見てくださっている方がいらっしゃったとは…!!!感謝感激です!!ありがとうございます更新頑張ります!!! (2020年5月9日 10時) (レス) id: 2dc5e30747 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チェレステ | 作成日時:2018年6月11日 21時