相川瀬成という男 ページ5
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「えー、経済学部1年の加賀宮一輝です。よろしくお願いしまーす。」
なんてことのない挨拶を適当にし、また席についた。その直後、前に座っていた女が話しかけてくる。
「ねぇ、一輝くん!あんまり合コンとか来ないよね?どうして今日は来たの??」
「私もそれ思ってた?!一輝くん来てくれて嬉し?い!」
あからさまな猫なで声。思っていたより積極的な女子たちに、若干引き気味になる。
決まってんだろ、彼女いたからだよ。んで今日来てんのは振られてっからだよ!
...とは言えず、どうってことない返しを頭の中で探った。
「あー...、たまにはいいかなと思って。それに今日来る子みんな可愛かったからさ。」
「えーもうやだ!!」
「一輝くんに言われると恥ずかしい!」
はいはいどうも。そろそろ他んとこ行ってくんねぇかな。
「おい!一輝にばっか構うなよ?、俺らの相手もしろって!」
奥から悠太の声がした、ナイスタイミング。実際今日はただ酒を楽しみに来ただけだ。
無駄にべらべら喋って、LINE交換して、あわよくばホテル、なんて前の俺だったら考えていただろうけど、もうそういう気分には到底なれない。
まだ大学1年だろう。今から枯れてどうする、とすっかり恋愛から冷めた自分を嘲笑する自分もいる。
だが無理なものは無理だ、現にさっき、女の相手をするのも飽き飽きしていた。
俺は恋愛に疲れてんだな...。
水割りの焼酎を、ぐいっと無理やり喉に流し込んで、虚空をぼんやり見ていた。
「お酒のペース早いですね。」
「え...。」
相川瀬成がグラス片手に固まっている俺を見つめていた。照明によって作られた影で、顔の半分が暗
くなり、微笑を浮かべているその姿はミステリアスに見えた。
「あ、まぁ...ちょっと色々疲れてて...。」
「確かに、新年度ですしね。あ、焼酎好きなんですか?」
「あぁ。ロックだと流石に酒の回りが早いから、水割りにしてるんだけどな。」
「僕もお酒好きです。あんまり強くないですけど...。」
「まじ?顔色変わんないまま、すごい飲んでそうなんだけど。」
「ほんとですか?」
「おう笑」
以外にも、相川との会話は思ったよりも弾んでいった。
酒のせいもあったかもしれないが、初め見た時の緊張感は嘘のように消え、普通に楽しく話している自分がいる。
ただただ心地よく、酒を煽るペースも自然と上がっていった。
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作者名:涼 | 作成日時:2019年6月23日 23時