懐疑 ページ27
＿＿＿
ゲイに対して偏見があるわけではない。ただ、自分の身の回りに今までそういう人がいなかったから改めて驚いたのだ。
そう分かると、不思議に思っていたことの謎が解ける。合コンは意味が無いと言っていたことも、女子を見る目がやけに冷めていたことも。
いや、ならば一つ疑問ができる。
「じゃあなんで相川は、あの合コンに来たんだ？女目当てなわけじゃねぇんだろ？」
悠太はあの合コンのセッティングも兼ねていたはず。何か知っているのではないだろうか。
すると、悠太は目を泳がせた。
「いや〜...それは知らねぇわ。」
絶対知っている顔。分かりやすいのはお前だ。
「嘘つけ、目が泳いでる。」
しかし思い直した。
性マイノリティーに関することは、デリケートであったりもする。深く探るようなことは良しとは言えないのかもしれない。しかも本人ではなく第三者であると、個人の意見とは別に偏見も入ってしまうこともある。
「ま、別に言いにくかったらいいよ。」
「いやっ！そういうんじゃねぇんだけどさ...」
また悠太が気まずそうな顔をする。どこか申し訳なさそうにも感じる顔だった。
これは...こいつに否があるタイプだな...？悪戯をした小さい子供が、それを隠すようにモジモジする態度。あれに似ている。言う言わないはっきりしろ。
悠太が一人苦悩している横で、ずっとぼんやり思っていたことを改めて考えた。
相川とのことをこのまま放置するのは違う気がする。
”忘れてください”
不自然な明るい声で俺に言った、胸を締め付けられるような憂いを見せた目で。
相川のことが少し知れたわけであるし、何かしらの行動は起こさなくてはいけない。
このまま鬱々とした日を過ごすのももう嫌だった。
「あー...その...ちょっと言えねぇんだけどさ！一つだけ。」
「なんだよ。」
少し考えを巡らせていた間に、悠太が思い切ったように声を出した。結局言わないのかと思ったが、何かあるようだ。
自己弁護か何かか、と思ったが、ふと悠太は表情を一変させた。
何かに胸を痛めているような、深刻で辛そうな顔だった。いつもヘラヘラしてばかりいる悠太からは想像もしないような＿＿
「一輝、......瀬成は、相川はやめとけ。」
「は....？」
＿＿＿
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作者名：涼 | 作成日時：2019年6月23日 23時
