【BL オリジナル】間違えても愛 (ページ17)

今日:10 hit、昨日:5 hit、合計:6,906 hit

会話の中のページ17

.

「え...。」

いきなり僕に話しかけられたことに驚いたのか、一輝さんは一瞬固まった。

「あ、まぁ...ちょっと色々疲れてて...。」

彼は半分笑いながら、でもどこか、本当に疲れたような表情をした。だが、いきなり詮索するのはデリカシーが無いだろう、と当たり障りなく返す。

「確かに、新年度ですしね。あ、焼酎好きなんですか？」

一輝さんの片手にはずっと焼酎があった。ビールは最初だけだったのだろうか。酒は強い方だな。

「あぁ。ロックだと流石に酒の回りが早いから、水割りにしてるんだけどな。」

「僕もお酒好きです。あんまり強くないですけど...。」

「まじ？顔色変わんないまま、すごい飲んでそうなんだけど。」

それは心外。酒は弱い。

「ほんとですか？」

「おう笑」

初対面で話すのに少し緊張はあったが、彼はとても話しやすかった。気さくに明るく、誰とも話さず一人酒を煽っていた先程とは、大違いだ。

お互いが話を合わせるわけでもなく、自然に会話が弾んでいくような...。
最初は遠慮して敬語で喋ったが、自然とタメ口になった。

時折見せる、彼の屈託くったくのない笑顔にドキッとさせられ、ごまかすために酒を飲んだりしていたので、思っていたよりも酔いが回ってくる。

彼の方は、会話が弾むごとにどんどん飲むペースが早くなっているようだ。
少し心配になったが、変な酔い方はせず、驚くほど整った顔をクシャッとさせて、よく笑うのだった。

「だろ？やっぱお前もそう思うよな！気が合うわ俺ら！」

趣味なんかの話をしている時、勢いで彼が僕の肩へ手を回した。

心臓がドキッとする。

肩に乗った手は酔いのせいか少し火照っていて、心地よい重さだった。

近くに顔があり、目を逸らしてしまう。

＿＿いつもなら自分からガンガンいって、流れを作って堕とすのに...彼は何だか無理だ。

ノーマルだろうし、僕のことは完全に友人として見ているな...。この心地よい雰囲気のままでもいいか、とも思った。

だが、形のいい薄い唇を見ると、無性に駆り立てられる。

その大きな、だけれど綺麗な手指を見ると、身体がもどかしくなる。

その目で見てほしい、その手で触ってほしい、その声で＿＿＿

「相川？」

「っ！」

一瞬不思議そうな顔をされたが、また彼は普通に喋りだす。

何とも言えない苦い気持ちが、僕の胸に広がった。

.