青空の愛

♯ ページ42

.


徹也と俊光は目を潤ませ、夢丸としばゆーは感慨深そうに画面を見守る。



「Aちゃんお疲れ様！ 虫眼鏡だよ」


『あら虫さん』


「出産どうだった？」


この動画はサブチャンネルに投稿する予定だ。本来ならメインや夫婦それぞれの個人チャンネルに投稿すべもしれないけど、Aちゃんがサブでいい、と恥ずかしがった。

でも東海オンエア皆で支え、固唾を飲んで見守った出産でもある。亮くんもAちゃんも快諾してくれたし、僕が責任を持って編集を担う。



『そうやなあ……。妊娠からここまで本当に本当につらかったし、初めての出産を1人で迎えなあかんのは寂しくて心細かった。でも助産師さんも看護師さんも献身的にサポートしてくださって、不安は軽くなったよ』


「赤ちゃんが出てくる時は痛かった？」


『私途中で和痛分娩に切り替えたから痛みは軽くなったかな。でも少しは痛かったし、力を入れるタイミングが分からへんかったからちょっと困ったかな』


出産したての彼女の口から紡がれる産みの苦しみは男では決して味わえない。男達は皆食いついている。



『ほんで赤ちゃんの体が大きくて上手く回転せえへんかったから、吸引器の力を借りたし、助産師さんにもお腹めっちゃ押してもらった。母子ともに健康やけど難産やったわ』


ね、頑張ったね、とAちゃんは微笑みながら赤ちゃんに話しかける。この人がついさっき2日以上の過酷なお産を終えたとは思えない。



「本当にお疲れ様。頑張ってくれてありがとう」


『んふふ。赤ちゃんと亮会わせるためやもん。立ち会えへんなら私が責任持って産まなあかんやろ？』


赤ちゃんのほっぺをつんつん、と触る。目を開けた赤ちゃんはどことなく亮くんにもAちゃんにも似ている。正真正銘、2人が愛し合ってできた子供だ。



『予定やと22日に退院するで！』


「Aの誕生日じゃん」


『そうやねん。予定やったら27歳最初の大仕事が出産やってんけどな、26歳最後の大仕事になってんなあ』


これから6日間、Aちゃんはよりお母さんとしての自覚が芽生えていく。そこに亮くんが加わったら……



『とりあえず今から赤ちゃん預けてお休みするわ！ こっから1週間は亮に沢山赤ちゃんの写真と動画送るから覚悟しといて？』


「分かった待ってる！」


2人は名残惜しそうにまたね、と手を振った。

♯→←パパとママになった日

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す