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あれから16年が経った。人生の半分以上はこっちゃんのいない世界線で生きている。

でもこの墓には花や供え物、線香が絶えない。成人式の時には当時のクラスメイトがお墓参りに来てくれたりもした。私自身、お盆3週間前にも帰省して必ず墓参りをする。



「琴葉、私ね、5月に入籍して坂元から福尾になったよ。11月に前撮りして、12月に結婚式する予定やねんで」


ふと話しかけながら思い出す。亡くなる1週間くらい前、寝る前にこっちゃんと2人で恋バナをしたなあと。当時私達は同じクラスやったんやけど、こっちゃんと仲良しやったトシキくんと付き合うことになってた。



『トシキくん、わたしとけっこんしたい言うてんねん!』


『へえ! ラブラブやんか!!』


『Aは好きな人おらんの?』


まだ恋なんて分からなかった。それどころか初恋すらも経験していなかった。首を横に振る。するとこっちゃんはそっかあ、と寝返りを打った。



『わたし、Aちゃんが彼氏連れて来たらな、めっちゃ質問すんねん!』


『何で?』


『Aちゃんのこと、ほんまにあいしてるかチェックするから! Aちゃん大切やもん、変なやつにAちゃんあげたない!』


こっちゃんは恥ずかしい時にそっぽを向く。幼いながら、ああ、今こっちゃんは恥を捨ててねんな、と思った記憶がある。

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「ねえこっちゃん、何でここにおらんの……?」


親しいYouTuber仲間や視聴者、愛知の友達はおろかメンバーにも自分が双子だとカミングアウトしていない。もちろん亮や義実家も知らない。両親や兄からはせめて亮くんには、と説得された。でも言えなかった。

いまだに受け入れたと言いきれない琴葉の死を、幸せと引き換えに受け入れなければならない気がする。

……一緒に成長したかった。進級進学、冠婚葬祭を一緒に迎えたかった。2人でバースデーケーキのロウソクを吹き消したかった。

こっちゃんに亮を紹介したかった。私が一緒にいたら、家でりゅうのお世話しながら宿題しようよって誘ってたら、こっちゃんと離ればなれにならんかったのかな……
一緒に大人になれていたのかな……



「こっちゃん……、会いたいよ……っ」


どうしてもこの日は涙なしでは終われない。鼻の奥がツーンとして墓石が涙で滲む。



「A? 1人で泣かんでよ」


「え……?」

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設定タグ:東海オンエア , りょう , YouTuber   
作品ジャンル:恋愛
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みゆし(プロフ) - 最近読ませて頂いてます!パスコードを教えて欲しいです🙇‍♀️これからも素敵なお話楽しみにしてます (2月11日 11時) (レス) @page40 id: b2f1dffa53 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説の更新待っています! (2019年12月14日 1時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - rioyamakawaさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります〜! (2019年7月23日 10時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)
rioyamakawa(プロフ) - この小説占ツクの中で1番好きです!!これからも更新楽しみにしています!!! (2019年7月17日 11時) (レス) id: faed70be53 (このIDを非表示/違反報告)
あおやなぎ(プロフ) - たむさん» ありがとうございます(;;) これからも頑張ります!!! (2019年6月30日 23時) (レス) id: c05e59e944 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:あおやなぎ | 作成日時:2019年6月27日 22時

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