四十九話 ページ21
「──────────Aさん?」
皮肉にも等しい言葉が自らの内側に浮かんで、それがあまりにもこの美しい風景に似合わなくて早急に消し去ろうと頭を振っていれば、氷のように澄んだ、優しい声が数歩先から聞こえてきた。
氷輪のような艶めきを持つ澄んだ空色。その髪に目立つように生え伸びた赤い模様の刻まれた黒い角。淡い紫の綺麗な瞳。首元から下げられた鈴がカラカラと音を鳴らす。
今や璃月七星の秘書を務めるまでとなった半仙、甘雨だ。
「やぁ甘雨。こんなところで会うなんて、奇遇だね。」
璃月で生きる以上、七星との関わりは断つ事ができない。当然それの秘書を務める甘雨にはすぐさまバレた。
出会って早々涙と鼻水でグチャグチャになった顔で飛びつかれた時は本当に悪いことをしたと思った。
流石に友人との話し合いには関わって欲しくはないと思い、デットエージェントに少し下がるように伝え、甘雨との話題に話を戻した。
「甘雨はここに何をしにきたんだい?」
「ここには、花見をしにきました。…玉京台は帝君逝去の場所で、あそこで花見をするのは少し……。」
それもそうか。甘雨は岩神との契約に従い「璃月の数多くの命に最大限の幸せをもたらす」ために、仕事を詰めているまである。そんな目標であった岩神が逝去したとなれば、きっと仕事もままならなかったのではないだろうか。
甘雨の物憂げな瞳に振る話題を間違えてしまったことに気付き、急いで別の話題を考えた。
「琉璃百合を見ていたんだね。今は持っていないようだけど、誰かにあげたの?」
「はい。この前、凝光様の使いで会った旅人さんに会って、帝君の送仙儀式に使う琉璃百合を探していたそうだったので彼に渡してきたんです。」
琉璃百合の採取は送仙儀式の中で比較的準備の簡単な部類とも言える。鍾離殿の考えも加味して考えると、もう儀式の準備は整ったのかもしれない。
案外早かったな。結局、ほとんど力にはなれなかったが。
「Aさんはここで何を?」
「私は執筆活動のほんの少しの休息程度に。
それから、これからの璃月について少しだけ考えていた。」
正確には、これから璃月に起こりうる害について、どうすれば被害を抑えられるか、だが。
誰かを頼っても咎められたりはしないのはわかっているのだが、…どうしてもそれができないのは私の難癖のせいだ。
「Aさん。」
甘雨との会話の最中、下がらせていたデットエージェントが話しかけてきた。
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ノア(プロフ) - まっでまじだ!! (2022年11月13日 9時) (レス) @page33 id: 7cc6cd9634 (このIDを非表示/違反報告)
ぐへへへへ - あばばば好きすぎます!!お体お気をつけてください!続き楽しみにしてます!! (2022年9月14日 1時) (レス) @page32 id: 55d4558f37 (このIDを非表示/違反報告)
gtuysut5843…(プロフ) - 更新楽しみにしてます!お忙しいでしょうが頑張ってください! (2022年9月2日 0時) (レス) @page32 id: 5bb1efd8a4 (このIDを非表示/違反報告)
rurinigana(プロフ) - すっごい好みなものを見つけてしまった…!夢主ちゃんかっこよすぎる!!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2022年6月22日 11時) (レス) @page32 id: 29637ba3af (このIDを非表示/違反報告)
ふわな - 本当に面白いです!これからも頑張ってください!応援してます! (2022年6月15日 8時) (レス) @page30 id: 71a4ce2144 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とりまろ。 x他1人 | 作成日時:2021年6月10日 13時