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「で、ジゼルは私を毎朝起こしに来てくれるのかい？」
「あ？ふざけるのも大概にしろ、ヅラ野郎。」
「…………地毛だよ、リヴァイ。私の髪は地毛だ。」
「知った事か。クソ眼鏡が騒ぎまくったせいでお前のヅラ疑惑はこの兵舎内では有名だ。」
「……通りで最近周りの視線が痛いと思ったよ…。」
ヅラ？ヅラ疑惑？と頭にはてなマークをうかべているガキに説明しようと口を開ければエルヴィンが俺の言葉を遮るようにして満面の笑みをこちらに向けてくる。嫌な予感しかしない。
「リヴァイ、追加書類だ。さっき渡しそびれてしまってね。」
「……てめぇ、」
「因みに期限は明日までだ。宜しく頼んだよ。」
「いつかお前を真っ二つに削いでやる。」
「人類最強が言うと恐ろしいな。」
すらり、と笑顔でいいのけたエルヴィンに舌打ちを落とせば首を傾げていたガキは壁時計に目をやると分かりやすく顔を真っ青にさせた。…休憩時間でも過ぎたのだろうか、そんなガキを見ていれば慌てた様子で俺とエルヴィンに向き直り頭を下げた。
「ああっ！すみません！仕事に戻ります！！」
俺とエルヴィンの言葉も聞かずに嵐の如く去っていったガキは早歩きをしながら器用に髪を束ねていた。あの長い髪をいとも簡単に束ねてしまうとは、と無駄に感心していれば、
「ジゼルとはどうだ？リヴァイ。」
隣から感じるエルヴィンの視線。
「……何がだ。」
「まだくっついていないのか？」
「そんな戯言言う暇があるならさっさと部屋に籠って仕事をしろ、仕事を。」
「はは…、そう釣れない事を言うな。私としてはお前とジゼルは十分想い合っているように見えるがな。何か迷いでもあるのか？」
「……嫌な記憶を思い出させるな、クソ野郎。」
「そんなつもりはない。」
思わずエルヴィンを睨めば目を見開いたエルヴィンは穏やかに笑う。エルヴィンの言葉は俺が初めて壁外に出た際に言われた言葉で、嫌でも思い出したくない記憶が脳裏に浮かんだ。
だが、実質、迷いはある。現にその迷いがあるからこそ、俺はいつまでたっても前に進めていない。情けないが。
壁に背中を預けていればエルヴィンは俺の心境を察したのか窓の外を見詰めながら言葉を紡いだ。
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作者名：るかこ。 | 作成日時：2020年4月30日 13時
