深淵の中で手を差し伸べて。:h【リヴァイ】 (ページ11)

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「いっでえええええええ！！」

「とっとと失せろ、邪魔だ。」

「ひっどいなー！！！暴力男は嫌われるよ、ジゼルから！」

「……」

「ま、まぁそんな怖い顔しないでよ。でさぁ、最近ジゼルと会ってないでしょ？」

「……」

本の角が額に見事ヒットしたらしく額を摩りながらもハンジは言う。だがその唇は笑みを浮かべていて。こいつが何を企んでいる事はわかった。

ガキとは壁外以来あっていない、姿を見掛けたりはするが此方に気を使っているのか一切近づいてこようともせず、ガキはこそこそと倉庫に行ったり自室に行ったりとしている様だった。

あいつも忙しそうに兵舎内を走っているところを何度か見かけたこともあるが俺自身も忙しくて話し掛けたりはしなかった。

ハンジの言葉に顔を顰めたリヴァイ。はっはーん、と眼鏡を光らせたハンジは窓側に行くとどこかを指で差す。

「リヴァイ、君が迎えに行ってあげて。」

「……は？」

「だーかーらー、調査兵団の天使が庭でぐっすり寝ちゃってるんだよ！あんな可愛い寝顔…、飢えた男の餌食…否、今晩のオカズになる。そうなると天使が穢れてしまうッ！！！！私には耐えられない！！！」

泣き真似をしながらリヴァイに訴えるハンジを怪訝に思いつつもリヴァイは窓際に足を向けてハンジの指さす方向を見る。

「……あいつは襲われてぇのか。」

「ねっ！？やっぱりあれは駄目だよねぇ…。私だったらジゼルの寝顔を頭に焼き付けて今晩のオカズにしちゃうなぁ。男ならあの寝顔を見ただけで勃起す…ぐふっ！」

「喋るな、気持ち悪ぃ。」

真昼間からとんでもないことを言い出すクソ眼鏡の太股を蹴り上げる。

そして視線を窓の外に移す。こちらから見てもわかる背中を伝うような美しい金髪は太陽に照らされてキラキラと輝いていた。また伸びただろうか、ガキの金髪の毛先はベンチについている。

丸まったように眠る後ろ姿に無意識と出る舌打ち。あのガキ、無防備にも程がある。まるで自分の価値を分かっていない。矢張りあいつは技術面に関しては天才だろうが、女としての自覚はまるでない。正真正銘の馬鹿なんじゃねぇのか。

要は迎えに行け、とハンジは言いたいのだろう。否、そうでなくても勝手に俺の足は庭の方向へと歩いていた。