FKの甘い日常-K-

きたやまの好きなとこ K2 ページ6

その日は舞台稽古でくたくたになって帰ってきた


翌日も朝から通して稽古の予定なので、だいぶハードだけど、

それでも、

だからこそふじがやと一緒に居たくて、ふじがやの家に帰った






「ただいまー…」

荷物や上着は置いてあるが、リビングにも寝室にもふじがやの気配がない


すると、バスルームからシャワーの音が聞こえて来るのに気付いた




風呂かあー


　

荷物を置き、そのままどさっとソファに腰掛ける



「ふうー」

流石に疲れて身体が重い


こんな時はふじがやのお迎えになによりも癒やされるのに


さっき稽古場でシャワーは浴びて来たのだが、一刻も早く顔が見たくて、このままお風呂に乗り込んでしまおうかと考え、ふと正気に戻る



いや、…さすがにそれは恥ずい
　




でもどうもあのハードな稽古で気持ちが昂っているらしく、

今日はなんとしてもふじがやのそばに居たいし、くっつきたい

例のスイッチが発動しているらしかった



ここ数年は俺から何かアクションを起こさなくても殆どふじがやがくっついてくるからおれの面目は保たれていたのだが、舞台で忙しい俺を気遣ってか最近ふじがやは遠慮がちで


素直に仲良くしたいと言えば済む話なんだろうけど、意識してしまうとなかなか難しい





そうだ、今日はエイプリルフールだから、あれを試してみようか

そしたらなんかきっかけになるかも知れない



思い付いたら少し元気が出て、少し軽くなった身体を起こして急いで部屋着に着替えにクローゼットに向かった


クローゼットの中、ふじがやが作ってくれた俺の専用スペースにこっそり置いておいた紙袋から、それを取り出した


この間散歩中に立ち寄った生活雑貨の店のパーティーグッズなんかのコーナーでみつけたおもちゃ


パッケージを開けて装着してみると、


「…わかんないじゃん」


それはすでに指の形をしていて、すぽっとかぶせるだけの、ぐるぐる巻きの包帯



よーく見れば、もちろん嘘っぽいけど、ひとめ見たくらいではわからなくて、指を怪我したみたいに見えそうだ

真面目なふじがやだって、これくらいふざけても許してくれるだろう

それとも心配のあまり怒ったりするかなあ…

一抹の不安はあるものの、久しぶりにわくわくと子どもじみた気分で、ふじがやが出てくるのを待った

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